書店の冠婚葬祭コーナーで、今、一番上の棚にズラリと並んでいるが「エンディングノート」。
ざっと見ただけで30種類くらいあったでしょうか、手に取ってみると各社各アイテムとも内容はそれぞれ。
遺言の書き方がセットになっているノートや、家系図や自分史を書き込む日記風であったり、女性向けを強調したデザインになっていたり、終活ハウツームック本や終活DVDがセットになっているものなどもあって、どれを買っていいのか悩んでしまうほど。
関連書籍も多く、そのうち『エンディングノートの選び方』という本が出るのではないかという勢いですね。
高齢化社会が進む日本で、今後ますます注目されていくアイテムの1つであるエンディングノート。
自分の人生を振り返るためにも、買い求める気持ちはよくわかります。しかし、購入したはいいけどエンディングノートを実際に書く人は、ごくわずかなようですね。買っただけで満足してしまうわけではないでしょうが、正直、エンディングノートに、何をどう書いていいのかわからないという状態の方々が多いのではないでしょうか。
仕事だけでなく人生全体の棚卸となるエンディングノート
私ごとではありますが、46歳のときに長年勤めた会社を辞め、再就職活動をした際に、それまでのキャリアを振り返って職務経歴書というものを作りました。
今までの社会人生活で、いつからいつまで、どういう会社のどういうポジションで、何を果たして、何を得たてきたかという過去の経歴の〝棚卸″をして、自分が歩んできた道を見つめ直す作業が必要でしたが、それは楽ではありませんでした。
普段の生活で、嫌な記憶にはフタをしがちです。辛いこと苦しかったことは、心の奥底に埋め込んでいますが、過去の棚卸をすると、忘れていた感情が記憶の層から蘇ってきて、怒りや後悔にとらわれてしまうこともありました。それでも、ポジティブな面だけをすくい上げて、未来志向の自己プレゼンテーションを練って書いていったものが職務経歴書です。それがエンディングノートとなって、仕事だけではない人生全体の棚卸となれば、ますます大変であろうことは察しがつきます。
自分自身、そして家族や友人を対象にしたエンディングノート
就活の場合の職務経歴書の読者は見知らぬ採用担当者ですが、終活の場合に想定している読者は、まず自分自身、そしてご家族、友人などのごく親しい人たちと、さらには後にこれを手に取る可能性のある子孫たちです。
有能な自己アピールが必要なわけではなく、書かれた事実やそのときどきの感情、そしてそれをわかりやすく伝える文章が大事になってくるでしょう。重苦しくならずに、楽しく読んでいただきたいとも思いますね。