前回は「【都道府県別の葬儀】埼玉県秩父市の独特な葬儀慣習を紹介!(前編)」と題して、埼玉県の中でも秩父市に残る葬儀慣習を紹介した。一膳飯と枕団子のレシピが独特なことや、前火葬・骨火葬のため葬儀終了時間が早いこと、納棺のマナーが一風変わっていることなどについて触れた。今回はその後編と称して、前回紹介しきれなかったその他の慣習を紹介する。
本位牌へのタイミングが独特な埼玉県秩父
葬儀・告別式が終わると休憩を挟み、忌明け・初七日の法要が行われる。1日で初七日法要まで行うこと自体はほかの地域でも見られることだが、この休憩中に祭壇に供えられた白木の枕膳が朱塗りの忌明け膳に交換されるのである。お葬式の最中にこういったことが行われるのは、とても珍しいことだ。
枕膳の一膳飯もかなり特徴的で、通常お葬式では死が続かないようにと「繰り返し」を嫌うので、お代わりをしなくていいように一膳飯はてんこ盛りになっている。ところが、この一膳飯の上にさらにご飯で作った団子を載せるのである。しかもこの団子は故人に向けたものではなく、無縁仏に供えるものだという。その土地柄からか、このしきたりからは優しさを感じるのは私だけであろうか。
キャラメルや飴が入ったじゃらんぽんという会葬品
お葬式を終えると、参列者に渡される会葬返礼品の包み。一般的にはハンカチが入っていることが多いが、秩父市ではキャラメルや飴が入っている。
一説によると昔は、「じゃらんぽん」と呼ばれた葬列が喪家の庭を回るしきたりがあり、ほかの地方でも見られるものだが、小銭を会葬者にバラ撒いてた。その小銭がキャラメルや飴に姿を変え、じゃらんぽん自体も行われなくなったので、返礼品として配られるようになったという謂れがある。
次に、故人の遺物を近親者などに分ける形見分けが行われるのだが、形見分けと称していながら本物の遺物ではなく、新しい品物が渡される。会葬返礼品とは別に配られ、中身はタオルやハンカチということが多いそうだ。
葬儀後の新入り挨拶
こうしてお葬式のすべてが終わると、「寺送り」という習わしを行う。
僧侶が寺へ着くころに親族6、7人が赴き、本道と位牌堂での読経に加わるのだ。この経には「この度、うちの○○が亡くなり、このお寺に入ることになりましたのでよろしくお願いします。」と、寺の本尊と埋葬された人たちへの挨拶の意味合いがあるという。いわば新しく寺に入る人が“先輩”に自己紹介の挨拶をするようなものなのであろう。
葬儀・告別式を済ませ精進落としを終えると、最後に隣組が中心となって「お念仏」を行う。鐘を叩き、十三仏や南無阿弥陀仏などの念仏を各々7回、もしくは13回唱えるのだ。