埼玉県の秩父市は独特な風習が今尚色濃く残る地域である。今回は二回にわたって埼玉県秩父市の独自の風習について書いていきたいと思う。その一つ目が一膳飯と枕団子にまつわる。
一膳飯と枕団子のレシピが独特な埼玉県秩父市
人が亡くなると枕飯として枕団子と一膳飯を故人に供えるという風習は現代でも残っており、全国的にも知られている。
ところが埼玉県秩父市では、その作り方が独特だ。枕団子は一般的には上新粉を練って作るが、うどん粉を使うのが一般的になっている。そして一膳飯も、枕団子をゆでた煮汁で炊く。
前火葬の埼玉県秩父では、葬儀が終わる時間が早い
秩父市では葬儀・告別式の前に火葬を済ませてしまう前火葬が多いのだが、葬儀・告別式のはじまるのは午後1時くらいからという。
前火葬の地域は他にもあるが、その中でも埼玉県秩父市は火葬の時間が特に早く、午前8時から10時くらいに終えてしまう。そしてその後に葬儀告別式をかなり早めの時間帯にする。
納棺時も独特な慣習が残る埼玉県秩父市
納棺をする際には、立ち会った人に縄が配られ、各々の腰に結ぶ。地域によっては女性の参列者がこの縄をたすき掛けにすることもあるという。おそらく昔はお葬式といえば人手や労力のいる仕事であったし、そんなとき着物のたもとが邪魔で、たすき掛けで動きやすくしていたのだろう。その名残がしきたりとして形だけ今に続いているのかもしれない。
忌中見舞いではなくお悔やみ酒をふるまう埼玉県秩父市
弔問客が食事やお菓子を「忌中見舞い」として持参する地方もあるが、秩父では「お悔やみ酒」といって、お酒が持ち寄られることが少なくない。
忌中見舞いは残された遺族への差し入れ的な性格のものだが、一説によれば、このお酒は故人への手土産ということだ。
埼玉県秩父市では会葬者がお遍路さんになる?
お葬式の最中でも、変わったしきたりが見られる。会葬者が着席すると、全員に「金剛杖」が配られる。金剛杖とは霊場を巡る遍路でも使われるが、故人があの世へ向かう旅の旅装束の一つでもある。また男性の会葬者には、額に付ける白い三角形の布「かんむり」が配られ、女性の会葬者には「いろ(死装束の経帷子のこと)」が配られる。
そして会葬者がこれらを身に着け、僧侶が故人を仏門に導き帰依させる引導の儀式を終えるまで、まさにお遍路さんのような格好でお葬式に参加するというのだ。このしきたりの由来は、引導の儀式によって故人は三途の川を渡ることになるので、三途の川を渡るところまでは故人と同じ格好で見送るが、そこから先は故人一人であの世へ旅立ってくださいという意味合いからきているようだ。
まだまだある埼玉県秩父市の葬儀風習、次回はもう少し深く述べていこうと思う。