昨年2月に導入されたマイナス金利政策。導入の結果、銀行預金の利率が下がった。その影響で資産の運用先として個人向けの国債・地方債・社債が注目を集めている。理由としては、高利回りであることだ。さて、相続に関して国債等の有価証券の手続きには、若干面倒な点がある。国債・地方債・社債は公社債と呼ぶが、当コラムでもこれに倣い以後公社債と呼ぶ。今回は、公社債の相続上の手続きについて綴ってみたい。
まずは証券会社に連絡。そして必要書類を準備する。
これから公社債を購入する方は購入後、または既に公社債を所有している方が所有したまま被相続人となった場合、公社債も当然ながら相続財産となる。他の株式等の有価証券とは若干異なる手続きをする。具体的には、公社債の購入は全て証券会社を通して行うので、最初に当該証券会社に公社債の所有者である被相続人が亡くなった旨連絡する。これは、電話連絡が可能だ。連絡後に証券会社の担当者から、必要書類や手続きの指示があるはずなので、指示どおりに手続きをすれば問題無い。必要書類は次のとおりだ。
(1)死亡診断書
(2)被相続人並びに法定相続人全員の戸籍謄本等
(3)遺産分割協議書④相続人(相続放棄した方は除く)の印鑑証明書
※ただし、証券会社によって必要書類に若干の差があります
トラブルになりやすい公社債。解約し現金化するかしないかは難しい判断。
ここで問題になるのは、遺産分割協議だ。公社債だと前述のとおり高利回り銘柄もあるため、相続すればお得だ。故に相続したがる人も多い。そうなると、トラブルになってしまう。相続人の誰かが全ての公社債を相続するか、または法定相続分に準拠し相続するか、かなり揉めることになる。
トラブルを防ぐため、中途換金(解約)という手続きをもって、現金化してしまい、分割し易くするのも手だ。しかし、ここでも注意が必要となる。上場企業の社債ならば中途換金は問題ないが、国債・地方債は問題が生じる。国債・地方債は発行から一年を経過しないと、中途換金ができない規定となっているからだ。とは言っても、特例があるので安心して欲しい。個人向け国債・地方債の所有者が亡くなった場合、特例によって一年以内でも中途換金が認められる。中途換金の手続きについては、証券会社に直接問い合わせれば担当者が丁寧に教えて貰えるはずだ。
公社債をそのまま相続するか。それとも中途換金して現金を分配するか。どちらが最適かと言えば、判断するのは困難だ。理由は、公社債の時価(相続開始時)評価が困難だからだ。上場株式と違い、相場など有って無きが如くとなる。このような場合だと、証券会社の担当者に相談するか、ファイナンシャルプランナーに相談した方が良いだろう。
ちなみに上場企業の社債の手続きは、国債・地方債と同一なので省略する。