秋のお彼岸は「先祖を敬い、亡くなった人をしのぶ」ための行事だとのことで、お仏壇におはぎ等を供え、手を合わせた方も多かったと思います。そのお仏壇なんですが、若い韓国人の友人から怖いと言われたことがありました。彼女に言わせると日本の仏壇はどれも怖いのだそうです。「韓国にもありますが、もっといろいろなものが飾ってあって賑やかできれいです」と言うのです。国も違えば仏壇への感覚も違うものと、その時はあまり深く感じませんでした。でもこの頃若い日本の方々からも同じように言われたことがあり、ちょっと考えてしまいました。
仏壇の作りはお寺の作りを元に制作されている
仏壇というと家の中にあるいわゆるお仏壇のことと考えますが、広くは仏様を祭る壇のことを言い、お寺の仏像を安置する須弥壇(しゅみだん)も含まれます。そのため家庭内の仏壇は『お内仏(おないぶつ)』とも呼ぶそうです。
お仏壇も今ではいろいろな形があるようですが、一般的な仏壇には扉がついています。これは寺院の山門に見立ててあると言われています。また仏壇の扉の内側に障子の扉がありますが、これは寺院で内陣との境にある巻障子の代わりなのだそうです。そして仏壇の内部は三段に分かれていて、一番高い中央の壇を『須弥壇(しゅみだん)』、その上を『宮殿(くうでん)』と言って、そこにご本尊を祭るのです。そして左右には脇侍仏や祖師をお祭りします。そして位牌はその下にお祭りするのです。また新しくお仏壇を買ったときは、お坊さんに来ていただき、開眼法要(「精根(しょうね・しょうねん)入れ」)をしていただかなくてはなりません。これで初めてご本尊や位牌が礼拝の対象になり、仏壇の役割を果たすことができるようになるのだそうです。
つまり元々、お仏壇とはお寺と同じように仏様を祭るためのものだったのです。
仏様を祀るための仏壇から、故人との会話をするためのツールに変化?
仏壇に対して若い方や外国の方がちょっと怖い気持ちになるのは、そんな重い役割を果たしていることを感じてしまうかもしれません。ただちょっと考えてみると、私たちが仏壇に手を合わせるとき、本当に仏様にお祈りしているでしょうか?むしろ身近な亡くなった肉親たちの位牌に声をかけていることが多いと思います。
愚痴を言ったり泣き言を言ったり、うれしいことを報告したりお願い事をしたり…。もう話せなくなった親しい人たちへの会話のツール。現在の私たちはお仏壇をそんな風に思っているのではないでしょうか。
長い長い歴史の果てに生まれてきた私たち。それをつないでくれた祖先への感謝。それを伝える場がお仏壇ではないかと思っています。