沖縄本島に古くから住む人々の家には、独特な形状の位牌「沖縄式位牌(ウチナーイフェー)」がある。
どのようなものかというと、衝立のような形状の位牌に、札状の小さな位牌がはめ込まれている。この小さな位牌(位牌札)が、個人の位牌である。
位牌札は、一般に横に並べてはめ込まれる。一段式のものと、上下二段式のものがあり、上下二段式のタイプがより一般的である。
中国から伝わった可能性が高いウチナーイフェーが沖縄では一般的
二段式の位牌では、基本的にその家の代々の当主夫妻の位牌札を祀る。この方式では、夫の位牌札を上段に納め、妻の位牌札が下段に納められる。
中央に納められる札は、上段・下段ともにより幅が広い。そして、この札には、上段に納められるものに「帰真」、下段に納められるものに「霊位」という文字が刻まれている。
実は元々は、中央の位牌札はその一家の祖となった夫婦(あるいは夫のみ)の位牌であった。沖縄戦で失われた琉球王国王家(第二尚氏)の位牌も、中央には第二尚氏三代目の王である尚真の位牌札が配され、両脇に後の代の王と王妃の位牌札がはめ込まれていたという。この位牌札の並べ方は、中国の先祖の位牌の伝統的な配置順と似ており、そこからの影響が指摘されている。
本土で使われているヤマトイフェー
この沖縄式位牌は、今でも沖縄(特に本島)では一般的なタイプの位牌である。
また、これは沖縄式位牌に比べると非一般的であるが、「大和位牌(ヤマトイフェー)」という位牌もある。こちらも複数の位牌札を祀る。いわゆる日本本土(ヤマト)風の位牌、という意味であり、本土でも用いられている「繰り出し位牌(回出位牌)」である。小さな仏壇のような箱(厨子)型のケースに、位牌札が納められているものである。
この大和位牌は、普段は、「先祖代々の霊」と書かれた札が見える状態で仏壇に祀られる。そして例えば何年も前に亡くなった人(仮にAさんとする)のための法事の際には、全面の札を差し替え、Aさんの位牌札を見える状態にする。また、同じ大和位牌に祀られる別の人(仮にBさんとする)の法事の際には、今度はBさんの位牌札を差し替えて全面に持ってくる。
大和位牌は、より本土に近い沖縄本島よりも、むしろ宮古や八重山で用いられているが、その点も興味深い。