相続税の節税対策として、一番に挙げられるのは生前贈与だ。次に挙げられるのは、生命保険料控除だ。しかし、数十年前は別の対策法が主流であり、現在ほど規制が厳しくなかったため、常軌を逸した対策をした人達が居た。
養子を増やして相続税の基礎控除額を増額するという節税方法
かつて、相続税の節税対策の主流は被相続人が生前の養子縁組により、法定相続人の人数を増員し、相続税の基礎控除額を増額し、相続財産額を圧縮することで節税対策としていた。更に、養子縁組した人物には、相続を放棄させる(当然御礼はしていたが)ことによって、本来の相続人達の相続分を減額しないようにしていたのだった。
数十年前には、実際に上記のようなことが普遍的に行われていたのが実情だった。だが、関西のある家族が、養子縁組により赤の他人を含む数十人を自らの養子とし、実質的に相続税を免税としてしまった事件があった。これがきっかけとなって相続税法が改正され、養子縁組による節税対策には、一定の制限が課せられることとなったのだ。
当時、養子縁組の増員に一切制限はなかった
当時、養子縁組による相続税の節税対策には制限が無く、理論上ならば養子縁組により相続人を増員することにより、基礎控除額を相続財産と同額まで増やすことができた。そして、実際にそれを実行した。
国を原告とした裁判沙汰となったが、結局は制限すべき法規が一切無いため、そのままの処置となってしまい、その家族は相続税の課税を免れた。これを期にして一時期には、本来ならば莫大な相続税が課されるべきところが、免税となってしまった例が幾つかあった。
行き過ぎた養子縁組による節税が税制を改正させた
税金というものは、本来は税の公平と言う理念のもと、公平に課せられることを是とする。しかしながら、法の裏を描いて節税どころか、脱税に近い行為をするものが後を絶たない。
誰もが高額な税金を納付したくないのは事実だが、真面目に生活し、税金を納付している人が多いのも事実だ。公平性を損なうのは容認できない方が多いだろう。
ちなみに上記の養子縁組だが、事件が発覚した後、数年後には相続税法が改正され、養子縁組の人数に上限を設ける等の制限が課せられた。ただ、養子縁組による節税対策自体は違法ではない。相続税法の規定の範囲内であれば、今でも充分な効果のある節税対策である。
節税対策が脱税行為とみなされることも有り得る?!
終活は、人によって様々である。その一番の重きを成すのが相続税の対策であろう。
個人で悩むのは結構だが、税理士や弁護士に相談し、法の範囲内において無理のない対策を練るべきである。行き過ぎた節税対策は、状況によっては脱税行為とみなされ、大きな罰則を科せられる。自分だけではく、残された人達のために違法行為ではない対策を練っていって欲しい。