仏式の葬儀では、大抵の場合、お坊さんによる読経と戒名の授与がある。
このとき、一連の葬儀を執り行ってくださったお坊さんに謝礼として、また本尊のお供えとして支払うものを「お布施」と呼ぶ。
仏式葬儀にするだけで、葬儀費用とは別にお布施が上乗せされる
さて、それではお布施として支払われる価格の目安はいくら程度かご存じだろうか。
日本消費者協会の調査によると全国平均にして、およそ45万円に上るとされる。この中には読経料、戒名料、お車代、御膳料が含まれる。
読経料は、通夜から火葬までのお経を読んでもらったことへの謝礼を言う。戒名料は宗派によって大きく異なり、また戒名のランクによっても異なる。お車代はお坊さんを招いたときの交通費・宿泊費。御膳料はとはお食事代としてお渡しするもの。
上述したようにこれらの費用を全て足すと45万円ほどになるのだが、安くないことは明らかだろう。
仏教徒でもないのになぜか仏式葬儀にしている人が一定数存在する…
日本における葬儀のうち、9割が仏式で執り行われているとのこと(日本消費者協会の調査)。そして文部科学省が行った宗教統計調査では、日本人全体のうち仏教徒は7割程度とされる。つまり、仏教徒でない人で仏式の葬儀をあげている人が一定数いるということだ。
日本では室町時代末期ごろから、葬儀を寺院に依頼し、布施として経済支援を行う、という檀家制度が生まれた。江戸時代には檀家制度が確立すると、人々がどこかの寺の檀家となることは義務化された。一方で、現代の日本では檀家制度がゆるくなってきている。
二代前までは寺の血縁だった私の家系も、進学や就職によって地元を離れ、東京や大阪といった大都市へ越した人が多い。なかには、キリスト教系の学校や他の仏教の宗派の学校に進学した人もいる。ますます都市化が進む現代社会において、様々な宗教と交わる生活を人々はすることになるだろう。
仏式にするかしないかではなく、一番大事なことは弔う気持ち。
檀家として特定の寺と関係を持っているわけではなく、ましてや仏教徒であるわけでもないのなら、高額な費用のかかる仏式ではなく、無宗教の家族葬を行うという選択肢を選ぶ人が増えてきている。
大切なのは個人を弔う気持ちである。高額なお布施によって家計が圧迫されるよりも、金銭的にも心にも余裕がある状態で、思い出を語りながら送り出される方が故人も喜ぶのはないだろうか。