昔のお坊さんは悟りを開くために食べてはいけないとされているものが多かった。
特に肉や魚、そして「五葷(ごくん)」や「五辛(ごしん)」と呼ばれる辛みや臭みのある野菜は食べてはいけないものとされた。
しかし、そんなお坊さんがこっそり食べていたとされるのが山菜の「ギョウジャニンニク(行者大蒜)」である。
そしてこのギョウジャニンニクには現代人が注目すべき健康・美容効果があった。
悟りを開くためには精のつくものを食べてはいけない!
仏の道を志すお坊さんは自分の心に沸き起こる様々な煩悩を排除し、「涅槃寂静」の穏やかな悟りの境地に立たなければならない。
そのためには、修行の妨げになる怒りや性欲などが起きてはならず、その原因となるような食品もとってはならないとされた。
そのうち「五辛(ごしん)」と呼ばれるのがネギ、ラッキョウ、ニラ、ニンニク、アギ(香辛料のアサフェティダ)で、さらに経典によってはギョウジャニンニクやエシャロットも禁止される場合がある。
これらはいずれも「精のつく」食材であり、修行者にとっては逆に修行の妨げになってしまうものだったのだ。
特にニンニクは修行における様々な苦しみ、辱めなどに耐え忍ぶこと意味する仏教用語である「忍辱(にんにく)」が語源と言われており、その名前そのものに「我慢しなければならないもの」という意味が込められているともいえる。
厳しい修行に耐えるために食べられていたギョウジャニンニクには健康・美容効果がたくさん!
しかし、山に籠って厳しい修行を行う修行僧や修験者は時には体力を補わなければならない事もあったのだろう。
ギョウジャニンニクはそんな行者たちにこっそり食べられていたニンニクのような植物、ということからこの名になったといわれている。
そして、昔の修行者からも注目されていたギョウジャニンニクには、現代の我々にも嬉しい様々な薬効成分が含まれている。
その中でも注目すべきなのがビタミンB1やアリシンである。
ビタミンB1は疲労や倦怠感、食欲不振などを解消し、栄養ドリンクにも必ずと言ってよいほど入っている事からその効果は言うまでもない。
さらにアリシンはこのビタミンB1と結びつき、血液をサラサラにして血行をよくする効果があり、これにより新陳代謝を活発にし、体温の上昇、便秘の解消、また美肌効果や脂肪燃焼効果なども期待できる。
昔も今も求めるものは同じ
厳しい修行で疲れ切っていた修行者は、ギョウジャニンニクの食品としての素晴らしい効果を知っていた。
そして、現代に生きる我々にとってもその薬効成分はぜひ取り入れたいものである。
山菜の一種であるギョウジャニンニクの若芽は春先にスーパーなどにも並ぶほか、ネットでも醤油漬けなどになっているものを買うことができる。
ギョウジャニンニクは数本分食べるだけでも十分な効果があり、人によってはすぐに身体がポカポカしてくるなどその効き目を実感できる食材だ。
日々の生活や仕事に疲れたら、かつての修行僧の気持ちになって試してみてはいかがだろうか。