日本はいうまでもなく高齢社会です。日本の平均寿命は男性が約80歳、女性約86歳で高齢化率と共に平均寿命も世界一です。
自分の死に際を考える場合、健康寿命は切っても切り離せない問題
健康寿命という言葉があります。これは、健康上の問題なしで生活を送ることができる期間です。つまり、医療や介護を受けたりせず、活動的に自立した生活を送れる年齢です。
健康寿命は、男性が約71歳、女性約74歳です。つまり、男性が約9年、女性が約12年間のあいだに介護や医療の助けが必要となるのです。
長生きできることはいいのですが、多くの人はこのように何らかの障害や病気を持って生活しなければなりません。
特に、認知症や脳卒中などによって口からの飲食が難しくなることがあります。その場合は、人工栄養によって延命することができます。
延命を希望するか、しないか
人工栄養は医療行為であり、大きく分けて2種類あります。
・経腸栄養 (チューブを使って、胃や腸に直接流動食を入れる方法)
・非経腸栄養 (腸を使わずに、静脈中に直接栄養分を投与する方法)
それぞれはさらにいくつか方法が分かれています。各方法によってそれぞれ違いはありますが、こうした医療行為により嚥下機能など食べるための機能がなくなっても生きていくための栄養や水分を補給できます。
実は、こうした人工栄養は、老衰の状態や病気の末期の場合には、患者にとって苦痛や不快感を与えたり、誤嚥性肺炎や感染症などを起こしたりする可能性もあります。
穏やかに亡くなることができた可能性があるのに、こうした医療行為でかえって苦しむこともあるのです。
人工栄養を行わないというのは、餓死させるような感覚があるかもしれませんが、実は老衰や末期の場合には一番苦痛の少ない最期を過ごせる手段で緩和ケアでもあるのです。(もちろん、こうした「終末期」の判断は医師と相談する必要があります。)
今をより良くするためのエンディングノート
エンディングノートの項目には、自分の意思を伝えられなくなったときに医療ケアをどうしてほしいか、あらかじめ希望を書いておくところがあります。
もちろん、いつ自分がそのような状態になるか分からず想像できない、あるいはずっと先のことだと思い今はまだ考える必要はないかもしれません。
また、その時々の状況や心境で選択も変わってくる可能性が十分に考えられます。そして治療の方針は医師との相談は不可欠ということも忘れてはいけません。
こうした延命に関することは「生」と「死」という死生観の問題でもあるのですぐに答えは出ないでしょう。ですが、少しずつ「自分はどう死にたいか」ということを自問し、そこから逆算して、今の見直すのはどうでしょうか。それは、自分だけでなく、社会の一員として、自分と関わりのある人との関係性も見直す良いヒントにもなるはずです。
医療の発達によって多くの命が救われ、それで長生きできることはよいことです。しかし、ただその恩恵にあずかるのではなく、自分の意思で自分の最期の選択を考えてみることが、今をよりよい生活に改善していけるきっかけになるはずです。