仏教には故人につける尊称として「戒名」が存在するのは、みなさんご存知のことと思います。
これは故人が仏門に入り、仏の弟子として再スタートする際に付けられる名前です。
一方で、日本に浸透している宗教は仏教に限りません。
その中でも今回は神道について「戒名」の有無と、最近広まりつつある「贈り名」について、ご紹介します。
神道には「戒名」のかわりに「諡」が存在する!
まず神道にも「戒名」は存在するのでしょうか。
結論から言えば神道では故人が仏の弟子になるという考えは存在しないため、厳密な意味での「戒名」は存在しません。代わりに故人をその家の守護神として尊ぶ「諡(おくりな)」という名前が存在します。
有名な例を挙げるのであれば、「聖徳太子」という名前はこの「諡」にあたります。
飛鳥時代初期にはまだ日本には仏教が伝来しておらず、したがって生活の基盤となる宗教は神道でした。聖徳太子もこの諡とは別に生前は「厩戸皇子」と呼ばれていました。
現代の神道においてもこの諡の伝統は受け継がれ、更に性別や年齢で尊称が変化するなど体系化がなされています。
主に無宗教葬で使用される「贈り名」
ところで最近この「諡」が変化した形で注目されているのをご存知でしょうか。
それが「贈り名」と呼ばれるものです。
こうした文化発生の原因は現代の多様化する葬儀形態に在ると考えられます。中でも既存の宗教の様式に囚われない「無宗教葬」という葬儀形態からこの「贈り名」という文化が発信されています。
「無宗教葬」には読経や焼香もなければ、祝詞も存在しません。その内容は故人へ送る自由形式のメッセージや故人の生涯をまとめたビデオ上映などで構成されています。
この文脈における「贈り名」とは一体どのような意味を持つのでしょうか。
敬意にとどまらず、生き方そのものや功績を謳う「贈り名」
本来「諡」とは故人を敬う尊称でした。
しかしそれはあくまで神道に基づく文化であって、「戒名」のように形式化や諡のブランド化は避けられませんでした。こうした反省から生まれた「贈り名」は「無宗教葬」が含意する自由な発想と相俟って、故人への敬意に留まらず、『人生の生き方そのものや功績を謳う』意味を持つようになりました。
ここで一つ、有名人で「贈り名」を受け取った例を挙げましょう。少し前にニュースを賑わせていた森進一氏の歌謡曲『おふくろさん』の歌詞をめぐる問題について、関係があった作詞家の川内康範氏は死後「贈り名」を受け取りました。その名は「生涯助っ人」と言い、テレビドラマで一世を風靡した『月光仮面』の原作者としての彼の生き様がこの贈り名に表れているといいます。
宗教にとらわれない葬儀の増加とともにますますニーズが高まる「贈り名」
このような「贈り名」を広める活動は徐々に広がりつつあります。中でも「おくり名」というサイトではこの「贈り名」について詳しく解説されています。
葬儀形態か多様化して、お葬式の際に必ずしも宗派に則った形式がとられなくなっています。
「無宗教葬」や「自由葬」を考える際には、こうした「贈り名」を故人への最後のプレゼントとして用意するのも良いかもしれません。