一般的な遺言書は普通方式とよばれ、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類が存在する。今回は、普通方式の遺言書の基礎と意外な状況でも残すことができる遺言書、特別方式の「緊急時遺言」、「難船危急時遺言」、「隔絶地遺言」の詳細を紹介する。
普通方式・自筆証書遺言の作成
(1)自筆証書遺言の作成
●作成手順等
・本人が全文自筆で作成
※2020年7月法改正 財産目録はパソコン等で作成可能
(上記の場合も前頁に署名・押印要)
●申し立て
・遺言書を発見した人が、被相続人(亡くなった人)が最後に住んでいた住所地を管轄している家庭裁判所に申し立て
・戸籍謄本や収入印紙、切手などが必要
●その他
・2020年7月より法務局保管が可能になり家庭裁判所の検認が不要に
●特徴
・紛失、偽造、隠匿などの危険があるため法務局保管推奨
普通方式・公正証書遺言の作成
(2)公正証書遺言の作成
●作成手順等
・証人が2名立会いのもと、公証人が遺言書の内容を聞き取りながら作成
・遺言書は公証人役場に保管
●その他
・作成費用は相続財産の額によって手数料が発生
・5,000円(100万円まで)~249,000円+その他
●特徴
・費用は発生するが一番確実な方法
・遺言内容は秘密にできない
普通方式・秘密証書遺言の作成
(3)秘密証書遺言の作成
●作成手順等
・遺言者が自分で用意した遺言書の中身を秘密にし残す
・2人の証人と公証役場に持ち込み遺言書の存在を保障してもらう
・署名と押印だけ自分で行えば、パソコンでの作成や、第三者の代筆も可能
・手数料11,000円程度
●特徴
・遺言内容が秘密にできる
・変造、偽造の危険はない
特別方式の遺言書とは
今まであれば、特別方式の遺言書を残そうと思うこともなかったであろう。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、いつ緊急で入院をすることとなり、また遺言を残したくともできない状況がくるかもしれない。
そういった特別な状況下でも遺言書を残すことができる特別方式とよばれるものがある。特別方式には緊急時遺言と隔絶地遺言があり、さらにそれぞれ2種類に分かれている。
特別方式・一般危急時遺言の作成
(4)一般危急時遺言の作成
●作成手順等
・疫病その他有事で目の前に死が迫っている状況で残すことが可能
・3人以上証人(利害関係者以外)が必要
・本人が作成できなければ口頭で遺言者が内容を説明し、証人が文章にすることで、作成する
・20日以内に家庭裁判所に確認手続きが必要
特別方式・難船危急時遺言の作成
(5)難船危急時遺言の作成
●作成手順等
・船の遭難、飛行機の難航などで目の前に死が迫っているときに残す
・2人以上の証人が必要で、証人に文章してもらうことも可能
特別方式・一般隔絶地遺言の作成
(6)一般隔絶地遺言の作成
●作成手順等
・伝染病で隔離病棟治療中や刑務所に服役中、災害等で被災されている方等、すぐに死が迫っているわけではないが、自由に行動できない状況下で作成が可能
・警察官1名、証人1名の立ち合いが必要
・それぞれの署名・押印がいる。
特別方式・船舶隔絶地遺言の作成
(7)船舶隔絶地遺言の作成
●作成手順等
・船舶中に、死は迫っていないが船の中で作りたい場合
・船長または、乗務員一人と、証人2人以上必要
・それぞれの署名・押印がいる。