死後、火葬にされることを怖がっている友人がいます。
ホラー小説の読み過ぎでしょうが、「火が付いたことが刺激になって、生き返ったらどうするの!」と妄想しているのです。
日本では99%が火葬!
ニュースでたまに流れる、看立てが不十分で死後に息を吹き返した人の話などを出して怯えていますが、「心配だったらエンバーミング(防腐処置)希望という遺書を残したら」と周囲は言っています。
エンバーミングすれば、死後、体をきれいにしてもらえますから、その段階で手立ては十分でしょう。しかも血液を排出して防腐剤を入れますので、万全な処置ということになるでしょう。葬儀だって、十分に日を置いてから行うことも可能です。
ちなみに国民の大部分が一応は仏教徒で、かつ国土の狭い日本では、死者のほぼ99%が火葬ですが、土葬がないというわけではないそうです。
大都市など多くの地域では法令により死体の埋葬は不許可となっていますが、一部可能な地域もあるそうですね。
しかしながら、まったく地縁のないところへ出向いていって、いきなり土葬にしてくれというのは無茶すぎる話ですので、友人にもいずれ覚悟を決めてもらわねばならないでしょう。
しかしながら、自分が元気なうちは、死というのは怖いものですよね。
わかっていても辛い火葬後の拾骨
火葬は確かに、遺族にとっても大変辛い瞬間が幾つかあります。
棺とお別れして火を付ける瞬間とか、骨を拾うときなどは大変ショッキングで、周囲のサポートや葬式の段取りだという概念がなければ、正気を保つのが難しいほどです。でも、それらのショックを乗り越えますと「他界したのだ」という諦念がつきやすいかもしれません。
葬式までは棺桶の中に故人がいますが、葬式を終えて家に帰ってくると骨壺……というのが、しみじみと「ああ、仏様になっていくのだな」と思わせてくれます。
そもそも、お釈迦様は火葬にされたそうですね。普段の生活では神仏を特に意識していなかったとしても、こういう局面になると、宗教の意義を感じるものです。
ゾンビ映画が多い理由は宗教観や埋葬の違いかもしれません
ハリウッド映画を見ていると、お葬式のシーンではたいてい棺を土に埋めています。
アメリカでは土葬が主流で約7割を占めるそうです。広大な土地があるからできることなのでしょう。そして、宗派はさまざまでしょうが、約9割の国民がキリスト教徒だからなのではないでしょうか。死者復活という概念は、土葬だからすんなり入っていく教えのように思います。そもそも、死者の体がそのままで土中にあるというのは、死後の世界に対する意識にかなり違いが出てくるように思います。不謹慎な物言いかもしれませんが、ゾンビ映画の名作が次々と作られているのも、こういう背景に根ざしていると思います。土葬であっても、生者にとっての死は、やはり恐怖なのですね。
死に対する本能的な恐怖があるから、人は長く生きようとするのかもしれません。死を考えることは生きること。そして、死を畏れつつ、死者を敬い、弔いながら生きる――ご先祖が授けてくれた命への感謝の心を忘れることなく、日々過ごしていきたいものですね。