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歎異抄は誰が見ても終わってる最低最悪な人の最後の救いとなる仏教書

この世は苦しみに満ちている。仏教では生・老・病・死の4つの苦しみを説く。そんなこの世を力強く、あるいは強かに生きている人もいる。しかしほとんどの人はそうではない。世間の冷たい風に悩み、親しい人との永遠の別れに苦しむ。肉体は次第に老いて病に蝕まれ、やがては死の恐怖と直面する。いくら嘆いてもどうにもならない。そこで宗教である。この世ならざる世界を説き、瞑想などの行を教え、迷いから解放する。ところがそれさえできない、煩悩と怠惰の塊のような人もいる。そんな究極のダメな人のために「歎異抄(たんにしょう)」は世に出たのであった。

歎異抄は誰が見ても終わってる最低最悪な人の最後の救いとなる仏教書

歎異抄(たんにしょう)とは

歎異抄(たんにしょう)は浄土真宗開祖・親鸞(1173〜1262)の弟子の一人唯円(?〜1289)の著作である。その思想は、人間の無力と罪悪を知ることである。人間は「罪悪深重の凡夫」であり自力で悟ることはできず、絶対仏・阿弥陀仏にすべてお任せするしかない。そのための手段が「南無阿弥陀仏」の念仏を称えることであった。

唯円は師の亡き後、師の教えを反する多くの異端が現れたことを歎き、糺すことを目的として歎異抄を書いた。全18章から構成されており、前半10章は親鸞から聞いた言葉を書き残した親鸞語録というべきもので、後半8章が異端を批判する内容になっている。親鸞の思想のエッセンスとされており全体量も短い。読破するだけなら30分程度で済むはずである。このコンパクトさもあり、歎異抄は大衆にも非常に人気がある。特に着目したいのは常識とは真逆の教えを説く内容である。

悪人正機説

読んだことはなくても親鸞といえば歎異抄を連想する人は多いだろう。しかし歎異抄は浄土真宗においては危険な書であった。真宗大谷派の僧侶 清沢満之(1863〜1903)が公の場で新たに着目し紹介するまで、その過激な内容から秘匿されていたとされる。

よく知られる一文「善人なおもて往生す 況や悪人をや」などは代表的なものだろう。善人ですら極楽往生するのだから、悪人が往生しないわけはないという意味だ。普通に読めば奇天烈な論理である。阿弥陀仏が悪人を往生させてくれるなら、善人も往生するのは当たり前だというならわかるが、これでは逆ではないか。しかしそうではない。歎異抄 第9章で展開される親鸞と唯円の対話を現代風に書いてみた。

歎異抄 第9章での親鸞と唯円の現代版やり取り

唯円「いくら念仏を称えても、嬉しくもなんともありません。いくら極楽があるといっても死にたくないです」

親鸞「そりゃそうだろうな。私もだ」

唯円「ええ?親鸞様もですか」

親鸞「そんなものを信じろというのが無理な話だ。それができる人もいる。素晴らしいことだが私には無理だな」

しかし、と親鸞は続ける。

「阿弥陀さまや極楽を信じきれず、何をやっても救われない最低の存在、それが私たちだ。その最低の人間を救ってくださるのが阿弥陀さまだ。つまり我々のような者こそ救われるということなのだよ」

強い人に助けはいらない。弱くて苦しんでいるものこそ救われるべきだとする歎異抄

悪人とは煩悩だらけで救われない者のことである。阿弥陀仏は悪人こそ救うという。出来の悪い子ほどかわいいというではないか。救いを求めているから助けるのだ。例えば、川を悠々と泳いでいる者、苦しみながらも必死で泳いでいる者、なすすべもなく溺れている者がいるとする。最初の人には何もする必要はない。次の人には頑張れと応援したくなるだろう、万が一のために救助の用意はしておくべきかもしれない。最後の人にはそんなことは言っていられない。今すぐ助けなくてはならない。阿弥陀仏の広大な慈悲の前では、無能な人、苦しむ人こそが救われるべき人なのである。

歎異抄が説く無責任主義

仏教の建前としては、悟りを開くとか煩悩を滅するなどという。浄土思想にしても、阿弥陀仏にすべて任せる「他力」を説き、信心を得ることを目的とする。しかし歎異抄は親鸞本人が「信じる自信がない」と言い切ってしまう。さらに、人は悟れないので修行も参拝もお布施も必要無く、ただ念仏だけでよい。煩悩まみれであればあるほど救われるなどと畳みかける。これでは他の宗派はもちろん、当の真宗教団もたまったものではない。開祖のカリスマ性にも支障が生じるだろう。教団運営上困るのである。かくして歎異抄は禁書として扱われた。

この強烈な毒を含んだ書を公開した清沢満之は歎異抄などを元に、世間一般の倫理道徳を超え、如来に全責任を任せる「無責任主義」を唱えた。清沢の高弟の暁烏敏(1877〜1967)に至っては自分の女性問題すらすべて阿弥陀仏のせいにしてしまった。この無責任さこそ歎異抄の真骨頂である。

私たちは自力で生まれたわけでもなく、死の宿命は逃れられない。苦しみも悲しみも喜びも、気分や感情は絶え間なく流れてくるのみである。自分の意思でできることなどほとんどない。だから仏教は無我を説いた。私たちは仏にすべてを任せ、無責任に悠々と生き、悠々と死ねばよいのである。それが絶対安心の境地である。

地獄は一定すみかぞかし

しかし、それもできない人たちがいる。無責任よりさらに下の人間がいる。すべてを如来にお任せ南無阿弥陀仏。というわけにはいかない人たちがいる。歎異抄もそんな人には通じないのではないか。否、まさにそういう人達にこそ読まれるべき書なのである。

人はいざ、どうにでもならない時に直面したとき、神様仏様にすがるものである。死を恐れ、痛み・苦しみを恐れる。だから普段は祈りもしない神仏に祈る。運良く九死に一生を得て日常に帰ろうものなら、また神様仏様のことなど忘れて浮世の楽しさに溺れてしまうに違いない。まったくもって救いようがない。これぞ悪人である。このどうしようもない自分を生きていく。そして死にたくない死にたくないと往生際の悪い凡夫として死んでいく。歎異抄 第2章で親鸞は言う。

「いづれの行も及びがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし」
(どのような行も満足に修めることのできない愚かな私は、地獄以外に行くところはない)

精々念仏するくらいしかできない、ダメすぎる私たちを阿弥陀仏は救ってくれる。歎異抄はそう教えてくれるのである。

どこまでも救われない人へ

釈迦の最期には近隣の動物が集まってきた伝えられる。親鸞の師、法然は没すると五色の雲がたなびいたという。親鸞はそのような、奇瑞、奇跡譚がない。その人生こそ波乱万丈だったが、普通に生まれ、普通に死んだ。親鸞はどこまでも、選ばれない者。さえない凡夫であった。

浄土系仏教では阿弥陀仏を「親様」と呼ぶことがある。親は子をそっと見守るものである。ダメすぎる私たちだが、たまには歎異抄をめくり、念仏を唱えてみよう。30分もかからない。それすら面倒くさくてできない人でも大丈夫だ。そういう人こそを阿弥陀仏は救ってくれるだろう。

参考資料

■唯円 著/千葉乗隆 訳注「新版 歎異抄」角川ソフィア文庫(2013)
■暁烏敏「歎異抄講話」講談社(1981)
■暁烏敏「わが歎異鈔 上中下巻」潮文社(1994)
■石和鷹「地獄は一定すみかぞかし 小説 暁烏敏」新潮文庫(2000)

ライター

渡邉 昇(記事掲載日:2020/08/12)

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