高い効果がある相続税対策とは何かと聞かれると、生前贈与や生命保険の見直し等が挙げられるが、一定の制限はあるもののもう一つ効果的な相続税対策がある。それは、養子縁組である。
普通養子縁組と特別養子縁組の二種類あるうち相続税対策は普通養子縁組
養子縁組とは、血縁に関係なく人為的に親子関係を発生させることを言うとされている。当事者同士の合意に準拠し戸籍法の規定により、居住する市町村に届け出ることによって成立する普通養子縁組(民法第792条他)と、家庭裁判所の審判(民法第817条2項他)に準拠して成立する特別養子縁組がある。そして相続税対策として実施されるのは、殆どが普通養子縁組である。
普通養子縁組の手続きの手順
手続きの流れについて簡単に解説すると、各市町村に用意してある届出用紙(各市町村のホームページからダウンロードしても問題無い)に必要事項を記入し、当該届出用紙に満年齢二十歳以上の証人二人の署名をして貰ったうえで、養親並びに養子の戸籍謄本を添付し、窓口に提出すれば良い。
普通養子縁組の手数料や要件とは
手数料は無料となっているが、念のため各市町村に確認してみると良いだろう。養子縁組の要件だが、養親は満年齢二十歳以上の成年であること、養子が養親の尊属(両親若しくは祖父母)または年長者でないこと等が挙げられる。
普通養子縁組のメリットは基礎控除額の増額
養子縁組のメリットデメリットは次の通りとなる。メリットは、相続税の基礎控除額を増額できることだ。具体的には、基礎控除とは次の算式で計算するのだが、「三千万円+六百万円×法定相続人の数」養子縁組をすると法定相続人の数を増加させるため、基礎控除額が増加することにより相続税額が減少する効果を狙えるのだ。
しかし、このメリットには養子縁組の人数に一定の制限がある。養親に実子(血縁関係のある子)が居る場合には一人のみとされ、実子が居ない場合には二人までとされている。この人数を超えて養子縁組をしても法定相続人の数には含まれないので注意が必要だ。他のメリットとしては、生命保険の非課税額を増額させることだ。次の算式で計算するが、「五百万円×法定相続人の数」前述の基礎控除額と同じく養子縁組により法定相続人の数を増加させることで相続税額を減少させる効果を狙うものだ。
普通養子縁組のデメリットは解消の煩雑さ
デメリットはどうかと言うと、何等かの理由で養子縁組を解消する場合、市町村に養子離縁届を提出することになるのだが、その煩雑さにある。
解消に伴い協議によって解決すれば問題無いが、揉めてしまった場合は家庭裁判所の調停が必要になってくる。また、前述のように養親に実子が居た場合だと、当該実子を初めとした他の相続人達に不公平感が生じ、トラブルを招く恐れがあることだ。また、実子の配偶者を養子縁組にするとか、全く無関係であった人物を養子とする場合、他人即ち血族以外へ折角の財産が流出する可能性が出てくる等が挙げられる。
相続税対策として普通養子縁組を検討するなら慎重に
養子縁組は相続税の節税効果は高い反面、慎重に検討しなくてはならない対策と言えるだろう。手続き自体は困難なものではないが、法的拘束力が強いため注意が必要となる。手続きに移る前に税理士や弁護士等の専門家に相談すれば、そもそも自分達に向いている対策か否かも含めて明確なアドバイスを貰えるはずであると考える。