京都の三千院や鎌倉の明月院、島根の月照寺など日本全国に紫陽花が咲き誇る有名な寺院がある。雨がふりそそぐ梅雨時期になると、このような各地の神社仏閣の庭先に植えられた紫陽花が見ごろを迎えることになる。
栃木県にある鹿島神社が兼務している太平神社では、毎年6月24日にあじさい祭りが例大祭として開催され、4人のお稚児により紫陽花を奉納する「献花祭」が執り行われるなど、神社仏閣と紫陽花は馴染みがよい組合せといえる。
だが紫陽花を葬儀の際の献花としたり、仏壇に仏花として飾ったりすることはほとんどない。これだけ神社仏閣と縁がある花なのにどうしてだろうか。
紫陽花は毒を持つ花だからというのが献花や仏花に使われない理由
紫陽花は毒を持つ花だということが一つの理由とされている。献花や仏花に使う花として「棘がある花」「匂いが強い花」「毒を持つ花」「黒い花」は相応しくないとされており、紫陽花はこの中で「毒を持つ花」という点で相応しくないのだ。
紫陽花が持つ独の毒の成分ははっきりと判明されているものではないが、紫陽花食べたことで食中毒を起こした事例は多々ある。紫陽花の一種であるアマチャを煮だして作る「甘茶」を飲んだ子どもに中毒症状がみられた例もあるのだ。
毒性を持つほかに、紫陽花は色あせる花であり「老い」や「死」を想像させる、さらには病気を呼び込む花という説も理由とされている。
紫陽花を神社仏閣でよく見かける理由とは
現在では梅雨でもエアコンを使えば快適に過ごせるが、エアコンなどがなく医療技術も確立されていない時代は流行病で命を落とす人が多い時期でもあったのだ。多くの死者が出るこの時期に弔いの意味合いで神社仏閣に植えられたのが紫陽花だった。
このようなことから、紫陽花は病気を呼び込む花であると言われるようになった。
故人が好んでいたのであればお供えしても構わない
先ほどの理由以外にも、紫陽花が献花や仏花に一般的には使わない理由がある。切り花にした時に水揚げが悪く、花を長持ちさせるのが難しいという点だ。
だが、故人が好んでいたからお供えたいという希望があるなら、現在ではお供えしても構わないとされる。葬儀の際、紫陽花をお供えたいという希望がある場合は、葬儀社や菩提寺に相談してみるとよい。ただし他家にお供えとして持参するのは避けたほうがよいだろう。