生まれて初めて体験したお葬式は、父方の祖父のもので、わたしが小学3年生のときでした。
昭和の時代ですから、今のように斎場があちこちにあるわけではなく、自宅での葬式です。近所の人が集まってきて家具をずらして日本間に祭壇を作り、台所ではあれこれと煮炊きに大忙し。道には花輪がずらりと並び、家の中は弔問客でいっぱいになりました。
お坊さんの読経を正座で聴いて足がしびれたこと、大人たちが通夜の宴会をしているときに初対面の親戚の子と遊んだのもよく覚えています。焼き場では、棺が燃やされる際の音の大きさに恐怖しつつ涙を流し、焼き上がった祖父の骨は白い円筒形の陶器の骨壺に収められました。
骨壷内に微量の結露が生じ、それが溜まりに溜るそうです
祖父は菩提寺の墓に納骨されました。数年前に新たな故人が出たので、お葬式をして納骨という段取りになったのですが、その際に、墓下のカロートという部分を初めて見ました。線香を置く香炉の下のハメ石をずらすと、地下に石造りの四角い室・カロートが出てきます。カロート内には2段の棚があり、祖父の白い骨壺は上段に安置されておりました。30年ぶりの対面です。
そのとき、寺の係員が「こちらの仏様はいつぐらいにお亡くなりになりましたか?」と尋ねました。「30年前です」と答えると、係員は、祖父の骨壺を両手で持ってひょいとひっくり返しました。すると、壺の中から大量の水が出てきました。石床に水のこぼれ落ちる音が響いたほどの、かなりの量です。
(骨壺から水?)
(なんで?)
(どうして?)
と目を丸くしたまま驚きに固まっていると、係員が説明してくれました。
湿度の高い日に骨壺内に微量の結露が生じ、壺とカロートが二重に密閉されているので蒸発はせず、骨壺内に溜まっていくのだそうです。30年経つと、水が壺の口いっぱいまできていることが多いそうです。雨水が漏れ入ったというわけではなく、湿気による自然現象なので、いかんともしがたいことなのでしょう。カロート内の通気をよくすることは、構造上できないそうです。内部の点検ができればよいのかもしれませんが、安らかに眠るお墓ですので、ひんぱんに覗かれたり、ひっくり返されたりするのもよろしくないだろうと思ってしまいます。一番良いのは、骨壺に水が通る穴をあけておくこと、あるいは水が染み出ていく材質の骨壺を使うことだそうです。
おしゃれな骨壷はいかがですか?
今はいろんなデザインの骨壺がありますね。色形はもちろん、大きさや形も様々なようですが、これからお墓に納める骨壺を選ぶ必要のある方は、ぜひ水はけという面もご一考ください。すでに納骨されていてご心配な方は、風土立地やお墓の造り、墓石の材質などによってもいろいろと違いはあるかと思いますので、お寺あるいはお墓の方に様子を訊ねてみてはいかがでしょうか。