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聖なるものの喪失が教える価値あるもの 失って初めて分かる大切さ

2019年4月15日フランス・パリのノートルダム大聖堂が火災により炎上したニュースは世界を揺るがした。仏・マカロン首相は早々に復興を宣言し、世界から寄せられた寄付金の総額は1000億円にのぼっているという。これが凱旋門やエッフェル塔であっても、やはり落胆は大きかっただろう。しかし、炎上する大聖堂を前に何千人という人達が祈りを捧げ、泣き崩れる光景はその他の文化遺産に対する思いとは異なるものだった。

聖なるものの喪失が教える価値あるもの 失って初めて分かる大切さ

ノートルダム大聖堂の炎上

宗教的な建造物はその他の文化遺産とは異なる特別なものである。それは世俗的な価値観を超えるものであるからだ。宗教建造物は科学的合理主義の観点からみれば観光資源以外の何物でもない。しかしそれに留まるものではない。4月21日のTBSテレビ「サンデーモーニング」で、文化人類学者・上田紀行(東京工業大学教授)は、このように述べた。

「全てが経済化されて、全てが儲かればいいんだ、効率的に運ばなければいけない、という中で、お金では計り知れない、何か変わらない価値を持ち続けている。その遺産があることによって自分たちの文明、自分自身の存在が支えられているというような畏敬の念をかきたてる部分がある。そのことが逆にこれだけ毎日毎日変転していくような変化の激しい現代の中では重要さを増していると思えます」

フランス国民にとってノートルダム大聖堂とは

大聖堂はパリの中心に鎮座する。フランス国民にとっての統合の証であり、全てのカトリック信徒、さらにはヨーロッパ人の聖地でもある。だからこそ、その炎上の報にはカトリック以外のキリスト教徒、大聖堂を知る人々の心を薙いだ。

報道では涙を流し聖歌を歌う人々の様子が映された。我々日本人から見れば馴染みのない光景である。伊勢神宮や法隆寺が炎上している様を想像すれば近づけるかもしれないが、我々はあそこまで感情を移入できるだろうか。おそらく我々が落胆するとするなら、由緒ある寺社を失ったことへの歴史的な損失に対する「惜しい」「残念だ」という思いではないだろうか。

2015から17年にかけて、寺社の施設に液体をふりかけた事件が発生した。これに対して国内の反応は歴史的建造物を傷つけられた「怒り」であり、日本の文化を侮辱された「憤り」であったように思えた。炎上する大聖堂に祈りを捧げる人達の心情はそれらとは異なるように思える。「惜しみ」「怒り」「憤り」いずれも当てはまらない。強いて言えば例えようもない「悲しみ」であろうか。

現代の日本人が失いつつある「宗教心」

フランスではライシテと呼ばれる政教分離策が徹底していることで有名だ。しかしフランス国民にとっては政治と宗教が別であることは、別であるという端的な事実以上のものではない。単なる区別である。むしろ政治や社会を動かす合理的な要素とは無関係であることで純粋な宗教心が保たれているといえる。

一方、日本人は無宗教であることにある種の精神的熟成を感じている節がある。信仰を持っている人よりも、神仏を信じない人の方が科学的な態度を持つ理性的な人間であるとされている節がある。また、宗教は心の弱い人がすがるものであり、信仰を持たない人の方が精神的に自立しているというイメージだ。人前結婚式などことさら宗教色を遠ざけようとする傾向も、無宗教的態度がより現代的、つまり科学的で理性的な態度だとされているからではないか。

宮本武蔵にとって神仏はどんな存在だったか

宮本武蔵が圧倒的多数の吉岡一門との対決を前に、社に手を合わせようとして自らの弱さを恥じる場面がある。しかし武蔵は「神仏を尊び、これを頼らず」とした。神仏を軽んじるのではない、武蔵は神仏とは尊ぶものであり、勝手なお願いを聞いてくれる都合の良い存在ではないと言っているに過ぎない。武芸者としての矜持を保ったエピソードとして人気が高い。これも神仏に頼ることは弱い心だとされているからだろう。

しかし、人間はどうしても神仏に頼らざるをえない存在だ。死の恐怖、自然災害の猛威、抗えない運命…人知を超えたものには手を合わせるのみであり、その奥に大いなるものを感じるのは当然である。それでも目に見えないものを信じるのは難しい。こうして神像や仏像、聖遺物が作られることになる。宗教建築物は人間の心の現れなのだ。

イスラム過激派による文化破壊

世界中からノートルダム大聖堂復興への援助の手が差し伸べられているが、これと対称的な出来事がイスラム過激派による文化破壊である。2001年、アフガニスタン・バーミヤンにある遺跡群の大仏像がイスラム過激派組織「タリバン」によって破壊された。国連や国際社会は制止を呼びかけ、特に日本政府は熱心に交渉したが、その甲斐なく破壊は実行された。

さらに2015年、イスラム過激派「イスラム国」は占領したイラク・モスルの博物館で、貴重な文化財を次々と破壊、さらに、歴史あるイラクやシリアの遺跡群の破壊を繰り返した。世論はこれを許しがたい暴挙であると非難した。当然だろう。しかし筆者はこれを単純に暴挙であるとは言えないと考える。イスラム教の開祖・ムハンマドはメッカに入城した際全ての偶像を破壊し神(アッラー)の栄光を称えた。バーミヤンの破壊においてもタリバンは神の栄光を称えている。我々は彼らを「過激派」と言うが、彼らは彼らの言う「最後の預言者」の行為を踏襲しているだけだ。むしろ、これを批判する他のイスラム諸国の方がイスラムとしてはおかしいとさえいえる。

世論の批判に対し過激派は言う。「預言者ムハンマドは偶像を破壊するよう命じた。こうした破壊は神が命じているため数億ドルの価値があろうと関係ない」と。彼らもまた形は違えども、上田の言う「お金では計り知れない、何か変わらない価値」のために動いたのだ。非イスラム文化圏に育った筆者は文化破壊という行為を容認する気には到底なれない。あえて言うなら「悲しい」行為であると表現する他ない。

墓や位牌に宿る思い

日本人がこうした意味での「悲しみ」を理解できる、もっとも近い「お金では計り知れない」「聖なる存在」は、墓や位牌、仏壇など、愛する家族とのつながりを感じさせるものではないだろうか。自分の家の墓が心無い者に荒らされたり、災害で崩れていたりしたなら、自分自身が傷つけられた思いになるだろう。金を失うのは惜しい、物を壊されれば憤る。しかし、墓や位牌に宿る思いは、「お金では計り知れない、何か変わらない価値」であり、それが失った時、我々は「惜しむ」より「怒る」より「悲しみ」に身を浸すことになるだろう。

ノートルダム大聖堂の火災もイスラム過激派による文化破壊も共に悲劇であるには違いない。しかし、金やモノでは計れない本当に価値あるものとは何かであることや、人間という存在がいかに悲しい存在であるかを問いかける出来事でもあったのだ。

ライター

渡邉 昇

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