葬儀の多様化が進む近年「音楽葬」という言葉もよく耳にするようになってきた。音楽葬とは、基本的には読経を行わず、生演奏かCDで故人の好きだった曲、あるいは遺族が希望する曲を流して故人を偲ぶものであるが、仏式やキリスト教式の葬儀に音楽を取り入れる場合もあり、その形式には特に決まりはない。ただ一つ確かな事は、自分の葬儀でお気に入りの音楽を流して欲しいと考えている人が、数多く存在するという事だ。今回は、葬儀と音楽の関係につて少し調べてみた。
ジャズ発祥の地で行われれ葬儀パレード「ジャズ・フューネラル」
ジャズ発祥の地、アメリカはルイジアナ州ニューオリンズでは、古くからジャズを奏でるブラスバンドのパレードと共に棺を墓地へと運んで行く「ジャズ・フューネラル」が行われている。トランペット、トロンボーン、ドラムなどの楽器によるブラスバンドは、墓地へと向かう道では故人の死を悼んで静かな曲を演奏するが、埋葬が終わった帰り道では明るい曲に一転。故人の天国への旅立ちを祝福するように、パレードに加わった人たちも軽快にステップを踏み始め、ダンスは音楽に合わせてどんどん盛り上がって行く。
葬儀パレードを見て育ったジャズの父「ルイ・アームストロング」
パレードでは、先頭を行く親族たちを「ファーストライン」、その後に続く親族以外の集団を「セカンドライン」と呼んだ事から、後に、葬儀帰りの明るい演奏が「セカンドラインリズム」という一つのジャズのリズムを確立する事になる。「セカンドライン」ではピンとこなくても「聖者の行進」と言えば、日本人でも一度は聞いた事があるのではないだろうか。
そして、このジャズ・フューネラルを見て育った貧しい少年の中から、その後の音楽界に多大な影響を与え、ジャズの父と呼ばれたルイ・アームストロングが誕生したのだ。
日本国内での音楽葬の傾向と海外との比較
現在の日本の音楽葬では、実際にどのような音楽の使用が望まれているのだろうか。まず、音楽葬では流せる曲と流せない曲がある。それは著作権の問題なのだが、それは葬儀がどのような場所で、どのような形で行われるかによって違って来るため、ここでは、純粋に希望されている音楽について書いてみたい。
まず、クラシックではショパンの「別れの曲」、パッフェルベルの「カノン」、シューベルトの「アヴェマリア」などが人気がある。これらは静かで美しく、葬儀にはぴったりの曲だ。洋楽では、フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」、ビートルズの「レット・イット・ビー」などの往年の名曲。邦楽では秋川雅史の「千の風になって」、美空ひばりの「川の流れのように」など、ゆったりとした曲が人気を集めている。その他では、ミスターチルドレンややオアシスなどの名前も上がっている。
これがヨーロッパのランキングとなると、レッドツェッペリン、クィーンと言ったハードロック系が入って来ているのも興味深い。日本ではゆったりと、欧州では壮大に故人を見送りたいという傾向だろうか。
思い出深い葬儀になることは間違いない
人は、昔聴いていた音楽を聞くと、その頃の自分や、その時代についての思い出が蘇る。カラオケで友達とよく歌った曲、バンドで演奏した曲、ドライブで聞いた曲、落ち込んでいた時に励まされた曲、特に音楽好きでない人にも、人生の節目節目に思い出の曲があるはずだ。
葬儀の時、故人が好きだった曲が流れれば、参列した人はその曲を聞くたびその人の事を思い出すだろう。音楽は、人間の一生を彩る大切な存在でああり、最後まで重要な役割を担っているのだ。