遺族厚生年金とは?
遺族が受給できる年金のひとつに、「遺族厚生年金」があります。
「遺族基礎年金」は、故人が自営業者などで、生前に国民年金のみに加入していた場合に支給を受けられるものですが、「遺族厚生年金」は、会社員など、生前に厚生年金にも加入していた方であったときに、遺族基礎年金の支給に上乗せして受けとることができるものです。
遺族厚生年金を受給するためには要件がいくつかあります。
まず、故人が満たす必要のある要件として、厚生年金の被保険者であったこと、または退職等で厚生年金から脱退した後に、厚生年金加入中のケガや病気が原因で初診の日から5年以内に亡くなったこと。そして、故人に老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あること、保険料納付済の期間(保険料の免除期間を含む。)が国民年金の加入期間の2/3以上あること、もしくは亡くなった日が属する月の前々月までの1年間の間で保険料を滞納していないことが必要になります。
受給する側は、亡くなった方によって生計を維持されていた妻、子・孫(原則として18歳未満)と55歳以上の夫・父母・祖父母が受給できます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、どちらも生計を頼っていた方を亡くした遺族を助けるための制度ですが、遺族厚生年金は遺族に18歳以下の子どもがいなくて受け取れる点で、遺族基礎年金と取り扱いが異なります。遺族基礎年金は、一家の大黒柱を失った母子を助けるためにつくられた制度なので、遺族に18歳未満の子どもがいない場合には支給されないのです。
例えば、夫を亡くした妻が遺族年金を受給する場合、18歳未満の子どもがいる場合には遺族基礎年金と遺族厚生年金を組み合わせて受給できますが、子どもがいない、もしくは子どもが18歳以上の場合には遺族厚生年金のみの支給となります。
このように、遺族に18歳以下の子どもがいなくても受け取れるところが、遺族厚生年金の遺族基礎年金との最も大きな違いといえるでしょう。
遺族厚生年金の豆知識:残された妻の年金受給の仕組み
遺族が受け取る厚生年金には、受け取り方にいくつかのパターンが考えられます。
子どもが既に18歳以上になっていて、会社員の夫が亡くなった夫婦の場合で考えると、まず、妻は自分の老齢基礎年金を受け取り、老齢厚生年金を上乗せ部分として受け取ることになりますが、この上乗せ部分の受け取り方には3つのパターンがあります。
まず、自分の老齢厚生年金のみを受給するパターン。そして、夫の老齢厚生年金の3/4相当額を受給するパターン。最後に、妻の老齢厚生年金の1/2と夫の老齢厚生年金の1/2の合計額を受給するパターン。
いずれも、上乗せ部分は妻の厚生年金として優先的に支給され、差額を遺族厚生年金として受け取るという仕組みになっています。
2つ目のパターンが支給額が大きくなる場合が多いと思いますが、妻も働いていて保険料が高かった場合や、働いていた期間が長かった場合などには、他のパターンの方が支給額が大きくなることもあります。
この中で一番金額が高くなるパターンで支給されることになっていますが、夫妻の老齢厚生年金の金額を確認すれば、どのパターンが一番高くなるか計算することができます。年金事務所に行けば確認することもできますので、一度試算をしてみるのもいいかもしれません。