宮型霊柩車とは?
霊柩車というのは、遺体を葬儀会場から火葬場まで運ぶための専用の車両のことを言います。また病院で亡くなった遺体を自宅へ運んだり、自宅から葬儀会場に運ぶときにも使われます。ただしその場合は、霊柩車とは呼ばずに、寝台車や搬送車などと呼び方が変わります。
宮型霊柩車というのは、キャデラックなどの大型車両の上部に、神社や寺院の宮殿の屋根が乗っているかのようなデザインに設えた車のことです。宮殿部分は檜などの木製になっていて、金箔や手彫りの彫刻などが施され、豪華で派手な様相になっています。装飾は金、白木、漆などが使われ、職人の手作業によってひとつひとつ作られるため、一台の価格はかなり高価なものになります。だいたい一台あたり1500万円から2000万円程度になるようです。
そんな価格の問題や、そのあまりにも霊柩車として分かりやすい姿から、火葬場近くの住民から苦情が出ていたことなど、さまざまな問題や事情によって最近ではこの宮型霊柩車を見かけることは少なくなってきました。自治体によっては、宮型霊柩車で火葬場への乗り入れを禁止しているところもあるようです。
もともとは、葬儀がまだ野辺送りの形であったころ、葬列で使用されていた輿の代わりに、トラックの荷台に載せて運ぶようになり、それが次第に変化していったもののようです。戦後の高度成長期に入ったころ、徐々に贅沢思考へと人々の感覚も変わっていったことも原因ではないかと思われます。
ただ、1989年、昭和天皇の葬儀である、大喪の礼の際に使用されたシンプルな洋型の霊柩車に注目が集まり、また人々の時代とともに養われていった思考の変化によって、宮型霊柩車は好まれなくなってきました。
現在もわずかに存在はしているようですが、一度も見たことがないという若者も増えてきています。
宮型霊柩車の豆知識:宮型霊柩車が今、モンゴルで大人気?
モンゴルと言えば大相撲です。現在日本で伝統的なスポーツである大相撲の横綱は4人で、その4人中3人がモンゴル人ですが、その影響が意外なところに出てきていました。
モンゴル人力士たちが、祖国に帰ったおりに日本の珍しい宮型霊柩車を語ってくれたおかげで、今、モンゴルで宮型霊柩車の人気が急上昇しているということなのです。走る寺という珍しさとともに、信仰の普及に役立つものとしても、その理由になっているようです。
なにはともあれ、日本ではほとんど見ることの無くなった宮型霊柩車の活躍できる場を見つけることができて、本当に良かった。