神官・牧師・神父とは?
神官・牧師・神父はいずれも葬儀にも関わる宗教上の役職ですが、それぞれどのような人たちなのでしょうか。
神官とは、神社・神殿で神に仕えて祭儀・葬儀や社務を執り行う人を神官といいます。以前は特に公的に国家の官吏として任命された人を指しましたが、現在の日本では厳密な意味での神官は存在せず、いわゆる神主(神職)が俗に神官と呼ばれています。
牧師とは、キリスト教のうち、プロテスタントにおける教職者を指します。キリストが自らを牧者(羊飼い)に例えたことに由来しています。
また、神父はカトリック教会・正教会・東方諸教会において、司祭に対して呼びかける際に用いられる敬称です。教会では教会を一つの家族のようにとらえて、(父親的存在といった意味で)聖職者を呼ぶことからくる呼び名です。
神官は神道、神父・牧師はキリスト教の役職の呼び名である点でまず違いがありますが、牧師と神父でもプロテスタント・カトリックという宗派の違いからくるいくつかの相違点があります。
まず、牧師は教区・教会を管理し、信仰の指導をする人という意味で使われます。ただし、プロテスタントでは、すべての信者が祭司であるという教理(万人祭司)をもっているので、牧師はあくまで信者同士の交流から生まれた役割として理解されています。したがって、牧師は一般の信者と同じ立場と考えられており、序列がありません。
これに対して神父の場合、聖職者には大主教や長司祭、司祭、輔祭等の序列があります。そして、宗派により違いがありますが、聖職者には結婚・妻帯が原則認められない、という厳格な決まりもあります。(牧師は結婚・妻帯が認められています。)
神官・牧師・神父の豆知識:葬儀での役割
神式では、葬儀は神葬祭と呼ばれます。神葬祭では、故人が亡くなったことを守り神である先祖の霊に知らせ、先祖のもとへ故人を送ります。また、遺された家族を守ってくれるように祈りを捧げます。
また、神道において、死は「穢れ(けがれ)」とされており、これを「祓い、浄める(はらい、きよめる)」ことも、神葬祭の目的とされています。
この神葬祭は斎主と呼ばれる神官によって執り行われます。また、副斎主・斎員が斎主を補助します。なお、神道では死を穢れとされているので、葬儀は神社では行うことはできず、「祭場」として自宅や斎場を使います。
これに対して、キリスト教では葬儀は死者への供養を行うのではなく、故人に与えられた生涯を神に感謝し、神への礼拝をするという考え方で行われています。したがって、遺影や遺体に手を合わせたり、拝んだりしません。
カトリックでは通夜のことを「通夜の儀」といいます。また、プロテスタントでは通夜を「前夜祭」と呼び、いずれも神父や牧師が進行役と世話役を務めるのが一般的です。
このように、それぞれの宗教で葬儀のやり方が違うのは、それぞれの宗教において生と死に関する考え方が異なることによります。
つまり、仏教では、故人は来世で仏様の弟子になると考えられえていますが、神道においては、故人の霊は祖先の霊といっしょに家にとどまって、家族の守り神になると考えられています。そして、キリスト教では、死は神に召されて天国で安息を得る喜ばしいことであると考えます。
このようなそれぞれの考え方があるので、神葬祭では、故人の霊を神として祀る儀式が中心となり、キリスト教の葬儀では、故人が神に召されて安息を得られるように祈る儀式となっています。
それぞれの宗教を完全に理解するのは難しいかもしれませんが、基本的な考え方は理解して故人を見送ってあげたいですね。