地震や台風といった自然現象により、大きな災害が発生することが多い。罹災されてしまわれた方々には、気の毒としか言いようがないばかりか、一日も早い復興を願わずにはいられない。ところで、平成30年7月初旬に発生した豪雨災害が、特定非常災害として指定されることが7月14日に閣議決定され同日内閣府から発表された。
特定非常災害とは?
特定非常災害とは、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合、特定非常災害特別措置法の規定により、政府から指定される当該非常災害のことだ。この規定は、特定非常災害に罹災した人達の権利利益の保全等を図る目的で制定された。内容を簡単に解説してみると、税金の申告のような法定期限のある届け出等について、罹災によって期限内に届け出ることが不可能な場合、罰則規定が適用されることによる不利益や、本来得られるはずである利益を失うことなく、公平性を図るものだ。具体的には、運転免許証の有効期間の延長や、地方自治体への許認可手続きの期限の延長等である。
特定非常災害によって相続はどうかわる?
相続税についても、前述の規定の適用を受けることができる。簡単に解説してみると、災害救助法の規定により同法の適用を受けることになった市町村に居住する相続人が、相続が開始されてから、相続を承認するか放棄するかを判断する熟慮期間が通常は三ヶ月(民法第915条他)以内であるのに対し、平成31年2月28日まで延長されたのだ。
特定非常災害によって贈与は?
熟慮期間の延長以外にも、特定非常災害においての相続税の取り扱いについて触れておく。特定非常災害発生日前に相続又は遺贈により取得した特定土地等(特定非常災害の罹災地域に所在する土地等)で、災害発生日において所有していた土地等については、取得時の時価により相続税の評価額としないで、特定非常災害発生直後の価額を評価額として、相続税の計算をすることができることだ。また、特定非常災害発生日後に相続又は遺贈により取得した特定土地等について、前述同様に災害発生直後の価額を評価額とすることができ、更に当該特定土地が地割れ等の物理的な損失を受けた場合、災害発生直後の価額から原状回復費用を控除した価額とすることができる。これは、災害発生後の土地等の時価が著しく下落することが多いため、下落前の時価によって相続税が計算されると不当に相続税が高額になり、公平性を欠くことになるためこれを防止するために設けられている。
最後に…
他には災害減免法の規定による相続税の減免があるが、詳細は省略する。前述のように罹災された方達に対する救済措置は幾つかある。罹災してから調べて救済措置を申請するよりも、相談窓口や救済措置の具体的な手続きや方法について、予め調べ常日頃から災害に備えておくことも一考に値するものと考える。