平成30年7月6日参議院本会議にて改正民法が可決し成立した。相続税法に直接影響のある民放の改正は、実に40年振りとなる。改正の主な目的は二つだ。一つ目は亡くなった方の配偶者の老後の生活の安定を図ること等。二つ目は、法務局における遺言書の保管等に関する法律の制定だ。前回は前者を紹介したので今回は、二つ目の目的を中心に簡単に解説してみよう。
法務局での遺言書の保管ができるようになり、執行も速やかに行われるようになる
遺言書の内、自筆証書遺言について法務局で保管できる制度が成立した。これが「法務局における遺言書の保管等に関する法律」だ。
自筆証書遺言は被相続人の亡くなった後に発見され、遺産分割協議書がやり直しになる場合や、相続人以外の者に発見された後に偽造されることによって、正しく執行されなくなる場合等何らかのリスクが懸念される。こういったリスクを回避するために、家庭裁判所において検認(民法第1004条他)されることになっているが、当該制度も今回の改正にて見直される。具体的には次の通りだ。
(1)全国にある法務局で自筆証書遺言が保管できるようになる。更に、相続人からの申請によって、自筆証書遺言について保管の有無が調査できるようになる。
(2)自筆証書遺言を法務局に保管した場合、検認の手続きが不要となり、速やかな遺言書の執行が期待できる。
検認制度について解説すると、家庭裁判所内において担当官立会いのもと、相続人達が自筆証書遺言の内容を確認することである。なお、秘密証書遺言は当該制度の適用外であり、また、公正証書遺言は公証人役場に遺言書が保管されるため除外される。
死後の口座凍結も見直され、仮払い制度が実施されるようになる
改正点がもう一つある。それは口座の凍結の見直しだ。現状だと被相続人が亡くなった時点で、被相続人名義の全預金口座が各金融機関において凍結され、一切預金の引き出しや預け入れができなくなる。凍結が解除されるのは遺産分割協議が成立した後になるため、協議が成立するまでの間の生活費や葬儀費用が捻出できない状況となり、相続人達が金策に奔走することが多く見られた。この状況を解決する目的で、金融機関において相続時の仮払い制度が実施されることになった。具体的には、遺産分割協議が成立する前であっても、一定の要件を満たせば、当座の生活費や葬儀費用の支払いについて、被相続人名義の預金口座から金員を引き出すことができる制度である。
実際の施行は平成31年以降
これらの改正について、平成30年7月13日に交付となったが、実際の施行は平成31年以降になるものと考えられる。今後様々な媒体にて公示されるはずなので、インターネットや雑誌等で確認しておくといいだろう。また、詳細は税理士や弁護士の専門家に相談すれば分かり易く説明して貰えるはずだ。