先日、長野県小諸市のふるさと納税の返礼品として「永代埋葬権」が貰えることが話題になった。標高約1000メートルに位置し、見渡す先は北アルプスが広がる大自然の中、高峯聖地公園にある市営墓地に埋葬して貰えることが出来る権利だ。
永代埋葬権とは?
そもそもふるさと納税とは、自分が応援したい都道府県や市区町村に対し寄付することが出来る制度のことである。寄付金は使い道の指定ができ、一定額を寄付することでその地方が指定する商品や特産品が返礼品として贈られる。
「永代埋葬権」とは長野県小諸市に24万円寄付することで、無期限に納骨される権利を返礼品として贈る、今年2月から始まった制度である。合葬墓の維持費はふるさと納税の寄付金で賄うため、納骨された後は費用がかからない。そのため子供に墓守りとしての負担を負わせたくないという理由などから、受付開始から約3ヶ月の間で既に50件以上の問い合わせがあり、半数が県外に在住という割合になっている。2008年に設立されたこの合葬墓には、現在120人以上の遺骨が埋葬されている。
では、合葬墓の魅力とはどこにあるのだろうか。
なぜ今合葬墓なのか?
合葬墓とは、家族単位ではなく血縁もない複数の遺骨を一つに収めるお墓のことである。合葬墓式墓所、永代供養墓、合祀墓など呼び方は様々ある。
日本では先祖代々が同じ墓に葬られる家墓が主流であり、合葬墓や共同墓は家族が居なく身寄りのない人や身元不明者が葬られるものだという認識が強かった。しかし高齢化により年間で130万人以上が亡くなっている多死社会にも関わらず、都市霊園の土地が不足している現在、合葬墓の需要が上昇しつつある。実際、全国に500カ所ある合葬墓のうち約2割が東京都内に存在している。
墓不足と言われている現代社会、合葬墓として個人の墓の土地を持たず、修繕などの維持管理や掃除も任せることができ、費用も安いとなれば合葬墓の需要が増えていることも頷ける。
増える墓じまいと合同墓
都市霊園の土地が少なく墓が不足している問題の他にも、墓じまいする家庭の多さも合葬墓の需要に関わっている。
核家族化により、お墓を守る人がいない、お墓があるところが遠くあまりお墓参りに行けないという悩みを抱えている人が増えている。そんな理由からお墓参りが途絶え無縁仏となることを避けるために、現在のお墓を撤去し遺骨が収まっているお墓をしまう。
では、今までそのお墓に入っていた遺骨はどこに行くのだろうか。その行き先が、合葬墓や永代供養墓である。都内に多く存在し、初期費用がかかるだけでその後の費用は少ない合葬墓は遺骨の移転先として最適なのだ。
大自然で人を待つ
遺族の心の拠りどころであるお墓も、時代によって形を変えている。墓不足や墓じまいを経て、遺族の新しい心の拠りどころとなっているのが合葬墓である。合葬墓は共同のため、たとえ自分がお墓参りに行けずとも誰かがそのお墓を参っている。故人が寂しくない、ということは遺族にとって大きな安心だ。
浅間山と高峰高原、北アルプスが望める長野県の美しい自然に眠り、名前も知らない誰かのお参りを待つのも良いかもしれない。