日本では、一部地域にでは土葬の風習今もが残るが、全国的に行われている遺体の埋葬方法は火葬である。日本以外の国を見渡しても現在火葬と土葬の葬式以外を耳にすることはほとんどない。ところが、驚いたことに日本や海外において葬式の方法が火葬と土葬に限らない場合が現在もある。そこで今回は、ほとんどお目にかかることがない火葬と土葬以外の葬式を日本の場合と海外の場合で探り、人々の気持ちをみていこうと思う。
日本で行われる風葬
風葬と水葬という言葉を耳にしても、ほとんどの人が馴染みがないだろう。まずは前者の風葬についてみていこう。風葬とは遺体を風にさらすことで、遺体の風化を待つ方法である。琉球王国では古来より、人間の魂を海の彼方に還すという観念から積極的に行われていた。人々の中には、祖先の霊が守護神へと生まれ変わる場所であるとするニライカナイという民間信仰が根付いていた。そこでこのニライカナイ信仰から風葬を行う流れが広まったと考えられている。
その後、民間信仰の衰退に伴って風葬のほとんどが姿を消したものの、驚いたことに沖縄県の竹富町や与那国町では現在も風葬という慣習が残っている。この慣習が守られてきた背景には、民間信仰が衰退する物理的要素がなかったことや火葬場の整備が遅れているために火葬に手間がかかるといった様々な要因がある。ただ、高齢者が風葬を守りたい最も重要な理由は、ニライカナイの信仰を守りたいとするシャーマニズムの概念を踏襲するものであるようだ。シャーマニズムの概念を踏襲するための風葬と捉えることにすると、風葬が現在も残っているということは頷ける。
日本で行われる水葬
次に後者の水葬についてみていこう。水葬とは遺体を海や川に沈める方法である。江戸時代に熊野地方では補陀落渡海という風習が存在していた。これは寺院の住職など死んでいる人の遺体を船に乗せて水葬で葬るというものである。背景には熊野地方という地域が密教の聖地であり、数々の神話が伝わった信仰の場であることが挙げられる。
当時、他界との繋がりを求めていた人々が、熊野の御碕で想いを馳せたと考えられている。現在も熊野地方では、日本国籍の船である場合、船長の権限によって水葬が許可されていて実際に行われる例も存在している。水葬を行うことで他界との繋がりを求めるという考え方は今も通ずるところがある。
海外で行われる鳥葬
一方で海外で行われる葬式は、日本で行われている葬式とは色合いが違う。代表的なものが主にチベットで行われている鳥葬とニューオリンズで行われているジャズ葬である。まずは前者の鳥葬についてみていこう。鳥葬とは、遺体を裁断して断片化したものを鳥類に食べさせる方法である。チベットでは古来より魂が解放された肉体は抜け殻と同然であるとされるため、古来より現在に至るまで、この方法が採用されてきた。これは日本人からすると考えられない方法であるが、宗教上の観点からは天へ送り届けるための一種の方法とされている。死体を抜け殻と置き換えるならば、鳥葬の風習が受け継がれているということは頷ける。
海外で行われるジャズ葬
次に後者のジャズ葬についてみていこう。ジャズ葬とはアフリカ諸国で古来より定着しているジャズを演奏することで、死者を送り出すという方法である。この方法は現在、アメリカのニューオリンズでも採用されている。背景に、残されたものが強くなるように賑やかな演奏をすることで故人を安心させたいという想いを感じることができる。強くしっかりと、という考え方は現在にも通ずるところがある。
守られ続ける埋葬方法
このように、各地で行われている火葬と土葬以外の埋葬は、宗教的概念が大きく関わっている。ただ日本の風葬や水葬、チベットの鳥葬やアフリカ諸国のジャズ葬とどの埋葬方法を行うにしても、捉え方の違いはあれども、風習を守りつつ故人をリスペクトするという想いに共通点を見出すことができる。古来よりの風習を大事にして故人をリスペクトしているからこそ、火葬や土葬以外の埋葬方法が現在に残っているといえよう。