日本では、古くより土葬が行われてきた。これはその名のとおり、土へ埋葬する葬法である。ただ、現在では遺体を焼却する火葬が主流となり、我々が土葬を目にする機会はなくなった。しかし、驚いたことに日本の一部地域と海外では現在でも土葬の風習が残っている。そこで今回は火葬が主流となっている現在において、どのようにして土葬の風習が今日まで守られてきたのかを探っていこうと思う。
山梨県や和歌山県、三重県、高知県、奈良県の一部では土葬が主流
火葬が主流である現在において、土葬の風習を今日まで守り続けている地域がある。山梨県や和歌山県、三重県、高知県の一部地域がこれに該当するが、もっとも多く土葬が行われている地域は奈良県の山間部である。
奈良県では、故人の位牌を一般的な白木位牌である内位牌と同時に、土葬を行ったときに墓に置く野位牌も用意しなければならない。また故人の魂が戻ってこないために行う茶碗割りと門火といった儀式が行われるなど、昔ながらの風習が今も残り続けている。この背景には、奈良県に平城京を遷都した折に、多くの寺院が建立されて仏教の熱心な信仰と同時に昔の葬儀風習が現在に残っているということが挙げられる。そこで奈良県の山間部は土葬の風習を守り続けていくにはもっとも適した地域といえる。
海外で行われる土葬
一方で、アメリカやイギリスといった欧米諸国や韓国や中国といったアジア諸国では現在に至るまで、土葬が主流である。この背景には、宗教上の理由がある。例えばキリスト教圏であるアメリカやイギリスではイエス・キリストは死後に復活すると考えられているので遺体を焼く行為により死後の復活ができないというイメージがあり、古くから儒教の影響が強かった韓国や中国では朱子家礼によって土葬が義務づけられていた風習が現在も残っている。このように日本の状況とは大きく異なり、海外では現在も土葬を主流とした葬法が行われている。
土葬のこれから
火葬が主流となっている日本といまだに土葬が主流の欧米諸国やアジア諸国とも、古くからの宗教に対する信仰心によって葬法が異なっている。しかしながら現在このような国々で、衛生上の観点から、火葬へ葬法を変えようとする動きが加速している。日本の場合も土葬を行うには自治体の許可が必要であり地下水に影響しない、近隣住民の理解を得ること、管理体制の許可などが必要であり、実現までのハードルは高い。ただ、宗教観念や衛生的な問題を度外視しても古くから守ってきた伝統を守り続けていくことは極めて重要である。そこで我々は土葬に対して一定の理解を示すことが必要なのではないか?