日本で、古くよりもっとも行われてきた葬式は一般葬である。一般葬とは知人や関係者に広く知らせて、周辺自治体の協力で執り行うものである。この形態は、現在でも地方を中心に定着している。ところが、今日関東地方や近畿地方を中心に参列者を家族や親族のみにするという家族葬が増加傾向にある。そこで今回は、増え続ける家族葬のメリットと問題点、今後について探っていこうと思う。
家族葬のメリット
家族葬には複数のメリットが存在する。今回は家族葬におけるメリットの一部を羅列する。
まず、葬儀内容を自由に決めることができるという面である。これは参列者への配慮を気にすることなく、故人の意思や希望を尊重しやすいということである。
次に故人を偲ぶ時間を多く使うことができるという面である。これは参列者の対応に追われることなく、在りし日の思い出をゆっくりと思い出すことができるということである。
また葬儀の準備時間を減らすことができるという面も重要なポイントである。本来ならば準備期間中に考えなければならない会場や食事などを気にすることなく、親族の精神的な負担を減らすことができるのは大きなメリットである。
こう考えると家族葬の割合が増加傾向にあるのも頷ける。
家族葬の問題点
一方で、家族葬はメリットともに、さまざまな問題点も同居する。
たとえば、葬儀後の弔問の対応に負担がかるということや、故人の在りし日の思い出を詳しく知ることができないという点であるが、一番の問題点は、近親者のみで行う家族葬では故人とご縁があった方々に想いを伝えることができないということである。
これは故人に対してお世話になったお礼や感謝を伝える機会を失ってしまうということになるので、今後の近所や会社との関係性に深い禍根を残してしまうということも否定できない。
こう考えると故人の葬儀という場で、人間関係や、社会関係について配慮しないといけないので、ひとえに家族葬の方がいいとは言い切れない。
家族葬が増加傾向にあるのは理解できるが…
家族葬におけるメリットと問題点を検討すると、増加傾向にあるということは理解できる。もちろん故人の意思で家族葬になる場合や予算上の関係で家族葬になる場合もある。ただ家族葬では、ご縁があった方々に想いを伝えることができないという最大の問題点があり、そこには人間関係の希薄さをみてとることができる。だが、この問題を解決させることは難しくはない。家族葬という括りはそのままに、参列者の枠を広げることができればいいのではないか。こうすると故人に想いを伝えるということは可能になる。故人も最後にご縁のあった方々への想いを伝えたいという気持ちは同じはずである。このときこそ人間の温かみに触れる瞬間である。参列者の枠を広げた先に見えてくる葬儀こそ、重要ではないだろうか。