最近「スマ墓」というサービスが話題を呼んでいる。「スマ墓」とはスマホでお墓参りができるというサービスだ。世界中のありとあらゆるスポットから故人の思い出の場所や便利な場所など好きな場所を選んでそこを故人の墓にできるという。
いつでもどこでも月額500円でバーチャルなお墓参りができるスマ墓
登録されたスマホを持って「スマ墓」へ行くと、あらかじめファイルに保存した故人の写真や動画、ARを見ることができる。故人の姿を疑似的にそこで感じ取れるのだ。実際の遺骨は、運営元が提携している宗教施設に安置されており、「スマ墓」はデータ上登録されただけのものとなるが、それゆえにお墓を設置する場所の自由度は非常に高い。価格も月額500円と手の出しやすいものである。
違和感はあって当然だが、一方でスマ墓が満たすニーズも存在する
墓石が無く、スマホを使ってのお墓参りというものに強い違和感を覚える方も多いかもしれない。しかし、その低価格と場所の利便性ゆえにニーズはあるという。例えば、急に家族が亡くなってしまいお墓を立てる場所をすぐには決められない遺族が一時的なお墓としてこれを利用したり、また、お墓を立てるのにかかる時間や経費を削減したい人々や跡取りのいない人たちが利用しているようだ。
葬儀の多様化は葬儀周辺ビジネスにも影響を与える
このようなある種、斬新な種類のお墓が登場した背景をみると、そこにはやはり葬儀そのものの多様化があげられる。それに伴ってお墓も多様化の道を進んでいるようだ。実際にお金がなくて墓地や墓石を買うことができない人々が増えているという現状の中でこの「スマ墓」というビジネスは誕生した。少し前までは全く考えられなかったシステムだ。倫理的にどうなのかという意見は多いようだが、それに対する答えを指す宗教規範も薄れて多様化している現代にこそこのビジネスは成立しているのかもしれない。
最後に…
最近では、直葬、家族葬に続いてドライブスルー葬というものまで出てきているが、この「スマ墓」も葬儀の多様化の一部といえるだろう。葬儀、そしてお墓に関する価値観の多様化は今後ますます広がっていくであろうが、おそらく死者を弔うという葬儀の根本はなくならない。そしてまた、現在の「スマ墓」も変容していくお墓の中での過渡期の一部に過ぎないかもしれない。これからスマホよりはるかに優れた技術がさらに発達し、それが葬儀やお墓にも組み込まれていくだろう。葬儀はこれからもとめどなく多様化していくだろうが、大事なのは死者を弔うという根本に基づいて自分たちがどのような葬儀を選択すべきかきちんと考えることだ。スマホの次は何を使ったお墓ができるのか興味深い。