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歴史上の偉人が遺した数々の辞世の句とその作り方のポイント

去年の12月11日に、日本を代表する建設機械メーカー・小松製作所の元社長・安崎暁(あんざきさとる)氏は、「感謝の会」と銘打った生前葬を営んだ。阿波踊りも披露され、会を終えたインタビューに安崎氏は「死んでから葬式や偲ぶ会をやってもらうのは、本人はその場にいないので何となくピンとこない」、「(会を)やらせていただいて、(色々な人と)ちょっとでもお話できてよかった」等、感謝の言葉を語っていた。

またシンガーソングライターの小椋佳氏は2014年1月で満70歳になる「きり」のいい年に「けり」をつけようということで、「生前葬コンサート」を企画した。そして4日間、自身が作ってきたおよそ100曲の歌を歌った。

歴史上の偉人が遺した数々の辞世の句とその作り方のポイント

自分で自分の法事を行うことの重要性

日本史の研究者・播磨定男は、『灌頂随顔往生十万浄土経(かんちょうずいがんおうじょうじっぽうじょうどきょう)』の中にも、逆修、すなわち、死後の往生や成仏に役立つために、生前にあらかじめ功徳を積むことだが、そのための法事を行えば、この世においても幸福が得られると記されていることを挙げ、板碑造立における逆修の功徳が平安貴族たちに広く流布したことを指摘している。

そこで播磨は追善供養の「大きな落とし穴」として、「本人がいかに自分の法事を希望したとしても、その実行者は第三者に委ねることになります。この第三者が子や孫であれば先ず安心でしょうが、それでも自分の意思通りに実行されるという保証はありません。当てにできないという不確かさや不安も依然残っています。したがってこれらの不安を解消し、極楽往生を確実にするためには…(略)…自分で自分のための法事を行う、これ以上に確実なものはありません」と述べていた。

終活がブームとなっているが…

最近、シニア世代の多くの人たちの間で「終活」がブームである。それにまつわるセミナーは活況を呈し、多くの書籍も出版されている。とはいえ、政財界や芸能人の「大御所」のように、大掛かりな「生前葬」を営むことまでは…という人が大半であろう。まだまだ元気なのに、「死ぬこと」を考えるなんて縁起でもない!と周囲から叱責を受ける場合もある。先々何があるかわからないのに、「葬儀」をするなんて、お金は大丈夫なのか…と心配かもしれない。そのような人には、まずは「辞世の歌/句」を作ってみることから始めてみてもいいのではないか。

「辞世」とは?

コピーライター・著述家の荻生待也(おぎうまちや、1933〜)は、「人の一生にはそれまで生きてきた社会相や思い出がたくさん詰まっています。これら多くは個人の映像として、脳死する間際まで記憶に刻み込まれています。しかも他人と同じ情報はひとつとしてなく、個性という想念の引出しに収められています。これが一人の人間として生を終える頃、引出しを開けて中身の一部を引っ張り出したくなる衝動に駆られます」と述べた上で、「自分はこの時代に存在したのだという証明(あかし)を残したい」感情を「辞世」で表明できる。しかもそれは、「墓標を建てて自分が生存したことを後世に伝えたいという心理の延長上にあり、一種の精神的贅沢である」と締めくくっている。

「辞世」とは、この世を去るときに作った詩歌のことだ。郷土史研究家の松元十丸(まつもととまる)が言うように、「平常の生活でも歌を作るということは大変なことである。それを自分の命が断たれる直前に、自分の感懐を歌に託するのはどういう心理であろうか…(略)…従容として、一種の和歌を詠ずる。ここに日本人の美意識の一つの姿」が見える。もちろん西洋の詩にも、日本の「辞世」的なものはあるが、日本のように、それがひとつの「様式美」となってきた事例は珍しいと言えるだろう。

古事記や万葉集に残る「辞世」

必ずしも「辞世」を詠もうとして詠んだものかは判然としないが、例えば『古事記』の中に、東征の中で病に倒れ、死の間際につくられたとされる、日本武尊(ヤマトタケル)の歌がある。

  『嬢子(おとめ)の床のべに我が置きし 剣(つるぎ)の太刀 その太刀はや』

日本武尊は美夜受比売(みやずひめ)の寝床に、大切な草薙剣(くさなぎのつるぎ)を置いたまま、伊吹山(いぶきやま)の神を殺しに行った。それは、山の神は素手でも殺せるというおごりの気持ちや油断があったための振る舞いだった。日本武尊は、そのような自分への後悔の念を率直に詠じたとされる。

また、『万葉集』の巻2、223には、死を目前にして、自らを悲しんだ柿本人麻呂(660頃〜724)作とされる「辞世」がある。

  『鴨山(かもやま)の岩根(いわね)しまける我(あれ)をかも 知らにと妹(いも)が待ちつつあるらむ』(鴨山の岩を枕に伏している私なのに、それを知らずに妻は私のことを待っていることであろうか)

民俗学者の谷川健一は、日本人が人生行路の喜びも悲しみも託してきた「うた」について、その起源をたどるために、「草も木も石ころも青い水沫(みなわ)も『言問う』時代」、それは「日本列島に国家が統一される以前の、村落国家を単位とした社会」まで遡って考察した。そこにおいては、「自己の存在を確保することと他社の存在を侵害することは同一の行為であった。他者を侵害しなければ自分の存在が危うい時代であった。そして他者を侵害するのに最も有効なものが言葉の呪力であった」。それゆえ「うた」とは、「呪力を持つ言葉のたたかいの中での効果をあげるために洗練されていった」と結論づけている。

「辞世」が文学として形成され、一般大衆に広がっていった過程

このような「歌」が時代を経るに従って、本来のありようが忘れ去られ、「文芸」「文学」として様々な決まりごとが定められ、多彩な修辞を凝らすようになっていった。

そして「歌」の中でも「辞世」のスタイルが出来上がったのは、死生観のよりどころとなる仏教が普及した平安末期から鎌倉初期にかけてである。そしてその後に続く戦国時代から、厭世思想につながる「辞世」の定着や発展を促したという。また、それらに伴い、巧みに「歌」をつくることが、その人の知的教養の高さや豊かさを示すものとなった。江戸時代には、戦乱がない太平の世になったため、国民全体の識字率が上がった。その結果、一部の僧侶や武士階級のみならず、中産階級とも言える商人・町人たちに至るまで、「歌」に親しむようになった。それが昂じ、四季の花鳥風月や日々の移り変わりを詠む「歌」のみならず、「辞世」すら、誰かに代作してもらうほどの「ブーム」になったという。江戸後期の随筆家・伴蒿蹊(ばんこうけい、1733〜1806)は『閑田次筆(かんでんじひつ)』(1806)の中で、てにをはの間違いを心配して、歌の師に添削を乞う人ばかりではなく、自分の妻の辞世の代作すら頼む場合もあったことを書き残している。

辞世が特に多く作られたのは「死」が身近だった時代

こうした「辞世」が特に多くつくられたのは、戦国時代と幕末・明治維新期、そして明治の日清・日露戦争。そして第2次世界大戦末期だったという。自分の意思に反して死が迫ったとき、決死の覚悟の武将や志士、軍人たちが最後の思いを「もののふ」らしく、死の恐怖や愛する者たちとの別れの悲しさによる気弱さが微塵も見えない、勇猛果敢な「歌」を残したのである。

例えば足利側の軍勢に敗れた、楠木正成の長子・正行(まさつら、1326?〜1348)は四条畷(しじょうなわて)に出陣する前に、以下の歌を遺した。

  『かへらじとかねておもへばあづさ弓 なき数にいる名をぞとどむる』

そして終戦6ヶ月前の1945(昭和20)年2月、鹿児島県・知覧(ちらん、現・南九州市)に置かれた知覧特攻基地から4月29日に飛び立った当時22歳の四宮徹少佐は、以下の「辞世」を残している。

  『天長(てんちょう。天長節。現・昭和の日。昭和天皇の誕生日)の 月あび勇む 必殺行』

「辞世」を作る上でのポイントは?

もちろん、現代を生きる我々の「辞世」は、このように「もののふ」らしくある必要はない。先に紹介した荻生待也は、以下、「辞世」づくりのポイントを挙げている。

・自分の気持ちを偽らない。
・修辞上の技巧にとらわれない。
・出陣詠に多く見られるような、勇み足で作らない。
・何首も欲張らず、珠玉の一首を目指す。
・辞世には作者の名誉がかかっている。長い時間をかけ、納得行くまで入念に推敲を重ねる。
・たとえ秀作であっても、他人の作品はあまり意識しない。
・歌俳では韻律の妙が生命。定型を守ることで、リズミカルに口ずさんでもらえる。
・個人的に事情(わけ)ありの辞世は避ける。

これらに加えて荻生は、「辞世でのきれいごとは空虚(むな)しい」と言う。「きれいごとは即、体裁や見栄であって、本心の方は隠れてしまい、うかがい知ることが困難です。虚飾であることが見え透いていて、鑑賞する人の感動も共感も得られません」と、コピーライターらしい視点から、鋭い指摘をしている。

最後に…

こうしたことから、「生前葬」のみならず、「辞世」もかなり「難しい」と思う人もいるかもしれない。しかし、「今から5分後にあなたは死にます。さあ早く、いい辞世を詠んでください。はい、10、9、8、7、6…」と医師なり死神なりに宣告されてしまったわけではない。まだまだいくらでも時間はある。「辞世」にとらわれず、古くは『古事記』や『万葉集』、そして『新古今和歌集』などの名句を振り返り、「うた」の原点に立ち返って声を出して詠む。そして有名な武将や、名も無き軍人たちの「辞世」に一首一首当たっていくうちに、自然と荻生の言う日本の「歌」の定型が身につき、なおかつ自分だけのオリジナルの言葉で「辞世」を生み出すことができるようになっているはずだ。

こうして出来上がった平成の人々の珠玉の「辞世」を、どのように未来の人々が受け止めるのか。それを想像するのも面白い限りである。

参考文献

■伴蒿蹊『閑田次筆 第4巻』1806年 平安書肆
■日本随筆大成編輯部(編)『日本随筆大成 第1期 18』1976年 吉川弘文館
■松元十丸『 辞世の美学 』1983年 暁書房
■播磨定男『中世の板碑文化』1989年 東京美術
■星野英紀「逆修」福田アジオ・新谷尚紀・湯川洋司・神田より子・中込睦子・渡邊欣雄(編)『日本民族大辞典 上』1999年(478頁)吉川弘文館
■谷川健一『うたと日本人』2000年 講談社
■荻生待也『辞世千人一首』2005年 柏書房
■小島憲之・木下正俊・東野治之・八巻孝夫(校訂・訳)『日本の古典を読む 4 万葉集』2008年 小学館
■知覧特攻平和会館(編)『新装版 いつまでも、いつまでもお元気で 特攻隊員たちが遺した最後の言葉』2011年 草思社
■梅原猛『古事記 増補新版』2012年 学研パブリッシング
■小椋佳『小椋佳 生前葬コンサート』2013年 朝日新聞出版

ライター

鳥飼かおる

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