相続財産において、最も重要な位置を占める物は不動産だ。不動産とは、土地並びに土地の上に存する権利(借地権等)、そして建物のことを言う。平成6年(1994年)の統計では、相続財産の内76%が不動産であり、平成26年(2014年)の統計では、相続財産の内47%が不動産であった。不動産は金額も多額であり、物理的に分割し相続人達に均等に分配することも困難であるため、常に相続ならぬ争族の原因になることが多い。
土地の価格は4つに分類される
路線価という言葉を聞いたことがある方は多いはずだ。毎年7月に国税庁から発表される。
路線価は正式には相続税評価額と言い、文字どおり相続税と贈与税の計算の基礎とされる。不動産のなかでも土地は一物四価と言って、目的に応じて同一の土地であっても四つの価格が存在する。
(1)実勢価格(時価) 土地の実際の取引(売買)価格のこと
(2)公示価格 国土交通省が発表する土地の取引価格の指標のこと
(3)相続税評価額(路線価) 国税庁が発表する相続税並びに贈与税の計算の基礎となる土地の価格。
(4)固定資産税評価額 市町村が課税する固定資産税の計算の基礎となる土地の価格。
不動産の相続税はどうやって計算する?
さて、相続税並びに贈与税に直接関係するのは、(3)の相続税評価額となり、計算方法は次の算式による。
路線価 × 土地の面積 × 補正率 = 相続税評価額
補正率について簡単に解説すると、当該土地の立地や利用価値の状況による評価額の加算・減算のことを言う。補正率は地域によって既に規定されている。また、路線価の設定が無い土地の場合の相続税評価額は、固定資産税評価額×国税局長が決定した倍率で算定される。建物の相続税評価額については、次の計算式による。
固定資産税評価額 × 1.0 = 相続税評価額
相続税を下げるためには減額要素を見つけて評価額を下げればよい
そして、ここからが重要なポイントだ。それは、減額要素と呼ばれるものだ。減額要素は土地に存在し、減額要素を相続税評価額に可能な限り正確に反映させるか否かで評価額が変わってくる。つまり節税に直結しているのだ。減額要素とは、当該土地の周辺にゴミ処理場や養豚場等が所在する場合や、当該土地が接する道路から当該土地が高いまたは低い位置にある場合等、利用価値が著しく低いため価値が低下するものと見做せる要素のことだ。この無数に存在する減額要素を確実に見抜き、法令を遵守しつつ相続税評価額に反映させるか否かが税理士の腕の見せ所となる。経験がものを言うので、経験の浅い税理士だと減額要素に気付かず、相続税評価額に反映しないで(節税しないで)相続税を申告してしまう可能性もある。しかも、税務署では減額要素を把握していても、それを納税者に教示することはない。
最後に…
不動産を所有している者で相続税対策を考慮し始めた方は、是非とも税理士や弁護士等の専門家に相談し、不動産の適正な相続税評価額と減額要素を正確に把握しておくことを勧める。但し、前述の路線価や固定資産税評価額は毎年、または3年に一度改定されるので注意が必要となる。