相続税の申告業務に携わっていると、時には信じられない状況に直面することがある。それは、遺産分割協議が終了して相続税の納税まで終わった後、新たな相続財産が見つかった場合だ。しかも長期間使用していない土地(山林)であったため、売却も困難で相続人達の誰もが存在すら知らなかった程だった。
脱税とみなされることも?
見つかった原因は、被相続人の遺品整理中に古いアルバムが幾つかあり、その中に土地の権利書が挟まれていたことだった。確りと調査したはずであったが、土蔵の最奥に無造作に置かれていた大正時代の年月日が記載されたアルバムに、権利書が挟まれているとは筆者を含め誰も思わなかったのだ。結論としては当初の遺産分割協議は無効となり、相続人全員の合意をもって再度遺産分割協議を再開し、相続税の修正申告を行った。幸いなことに、税務署には脱税と見做されることは回避でき、少々の加算税並びに延滞税の納付で事なきを得た。
やり直しが利くケースとそうでないケースがある!
このようにならないためにも、遺産分割協議のやり直しについて、簡単に解説してみる。
通常だと、遺産分割協議は成立後に確定するため、やり直しはできない。しかし、前述のように新たな相続財産が見つかる等、分割協議内容に祖語がある場合には、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議をやり直すことができる。ただし、当初の遺産分割協議が問題なく成立していた場合に限りやり直しができるのであって、協議そのものが揉めてしまい家庭裁判所により調停若しくは審判された遺産分割協議は、やり直しが効かないので注意が必要だ。
民法と相続税法上では規定が異なる!
次に最大の問題だが、遺産分割協議のやり直しについて規定されているのは民法上での話なのであり、相続税法上ではやり直しの規定はなく、相続は終わっているものとされている。そこで、前述の例のように遺産分割協議をやり直し、土地の所有権の移動が行われた場合、贈与と見做され贈与税が課税されてしまう。また、状況により譲渡と見做されれば所得税が課税されてしまうことも充分に有り得る。贈与税は、相続税と比較すると税率が高いため、思わぬところで高額な税額が発生することにもなりかねない。また、前述の土地が譲渡と見做された場合だと、不動産所得税や名義変更時に課税される登録免許税も発生することになる。
最も重要な事は、そもそもやり直しになるような自体を防ぐこと!
問題の解決策としては、何よりもやり直しになること自体を避けることだ。相続財産がどこにどれだけあり、ローンの残高はどれだけあるのか。常に把握しておくことが最も重要なのだ。更に、相続人同士で意思の疎通を密にし、遺産分割協議が問題なく成立するよう心掛けておけば良いだろう。最終的には、税理士や弁護士と相談しつつ問題を解決すれば、より良い結果に繋がるはずである。