年末調整の季節がやってきた。サラリーマンに限らず、アルバイトやパートとして就業されている方も無関係ではないはずである。年末調整の給与所得控除項目として、生命保険控除がある。一定の要件を満たせば、最大で12万円まで控除を受けることができる。
所得税の控除は受取人が配偶者と子供のどちらであっても適用対象
さて、生命保険については、関与する人物が三種類存在することになる。契約者・被保険者・保険金受取人の三種類だ。この三種類の人物がどのような関係かによって、関わってくる税金が変わるのだ。前述の年末調整の例だと、サラリーマンが支給された給与から、生命保険金を支払っていたとして、生命保険について本人が契約者で、被保険者が配偶者や子供(当然本人も含まれる)で、保険金受取人が配偶者や子供である場合、支払った生命保険料は、所得税の給与所得控除項目の対象になる。また、本人が亡くなり相続が開始され、配偶者や子供が死亡保険金を受け取った場合は相続税の対象となる。
生命保険が相続税の対象となることについては、既にご存知の方も多いだけではなく、相続税の節税対策を考慮されている方も多いはずだ。実は、状況によっては死亡保険金の受取人を、配偶者ではなく子供にした方が、相続税の節税対策として有効になる場合がある。
そもそも相続税の節税対策として生命保険が有効となるためにはどうすればいい?
では、節税対策を有効なものとするにはどうしたらいいのかと言えば、次の要件を考慮すれば良い。
一つ目は、相続税の配偶者控除(相続税法第19条2項他)だ。相続財産から借金を差し引いた残額について、1億6千万円までは相続税が課税されない制度だ。
二つ目は、生命保険金の非課税金額制度(相続税法第3条他)だ。受け取った死亡保険金について、500万円×法定相続人の数の範囲内であれば、相続税は課税されない制度だ。
三つ目は、最大の要件である相次相続(二次相続とも言う)だ。相次相続とは、被相続人が亡くなり配偶者と子供が相続した後、更に10年以内に配偶者が亡くなり、子供が相続した状況を言う。相次相続だと、配偶者控除が利用できない。そうなると、生命保険金の非課税金額制度のみ利用可能な状況となるため、相続税が多額になってしまう可能性がでてくる。
一般的には配偶者が受取人だが、もしも多額の財産を所有していたら子供を検討する余地あり。
相続財産が死亡保険金のみであり、死亡保険金額も1億6千万円以内ならば、保険金受取人を配偶者として配偶者控除を利用し、相続税を非課税とすれば問題ない。しかし、死亡保険金が数億円であるとか、他に不動産等の相続財産があるか、配偶者自身にも財産がある場合、最初の相続では配偶者のみ配偶者控除を利用できても、相次相続では配偶者控除は利用できず、子供達は相続した財産に多額の相続税が課税されることになるのだ。この場合だと、配偶者よりも子供を死亡保険金の受取人とした方が、相次相続控除も利用することも考慮すれば、相続税は全体的に軽減されるはずだ。
子供を受取人する場合、気をつけるべきは二次相続
生命保険に加入されていて、他にも財産がある場合には、相次相続についても考慮に入れて相続税の節税対策を練る必要があると考える。最後に注意事項だが、子供を保険金の受取人とした場合、実際に受け取る際に子供は未成年であることが多い。未成年は保険金の請求は原則不可能なので、親権者か成年後見人が請求を行うことになる。未成年でなければ問題ないが、未成年ならば親権者等の選定も考慮すべきであろう。