「友引の日にはお葬式は行わない、仏滅の日には仏事をするのが良い」ーー六曜(ろくよう・りくよう)は日本の暦の中でなじみ深い暦注だ。どの手帳やカレンダーにも書かれているこの六曜、実は来る2033年には大問題が待ち構えているのだ。ひょっとしたら2033年の秋ごろから、お葬式の日取りが決まらなくなってしまうかもしれない。いったい何が起こっているのだろうか?
「六曜」とは? 基本知識とその決め方
六曜とは主に冠婚葬祭などの儀式に関わり、いつ行うと縁起がいいか、あるいは悪いかを判断するのにつかわれる暦注で、「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の6つ存在する。明治時代に入ってから政府に一時禁止されるも、第二次世界大戦後は吉凶にまつわる統制もなくなって再び暦に用いられるようになって現在に至る。日本ではかなり強い影響力を持っており、多くの手帳やカレンダーに記載されている。
六曜は、先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口 という順番で繰り返す。ただし旧暦における毎月1日の六曜はすでに決まっているため、今でも旧暦に基づいて六曜が決まることになる。その求め方は下記の通り。
[(旧暦における月)+(旧暦における日)]÷6=(計算の答え)…あまり
※この「あまり」の部分が以下のように対応するのである。
0…大安 1…赤口 2…先勝 3…友引 4…先負 5…仏滅
さて、このようにして旧暦を用いて六曜が決められているが、2033年の秋から2034年の春ごろにかけて、六曜が決められないということが カレンダー業界や仏教関係者内で話題になっている。いわゆる「2033年問題」である。
お葬式の日付が決められない!?
なぜ六曜が決められないのか。それは前述の時期には判断基準となる旧暦の確定が出来ないからである。原因は暦の制定における様々なルールを全て遵守すると月名の決定に不都合が生じることだ。
旧暦の月は、「中気」、つまり二十四節気の偶数番目で 冬至から次の冬至までを12等分したときの各区分点にあてはめて決められる。ただ そのまま当てはめていくと実際の季節とのズレが生じるため、どこかしらに1か月「閏月」を入れる決まりだ。
「中気のない月に閏月を入れる」「中気が2つある月には 春分、夏至、秋分、冬至を優先する」・・・他にもこういったルールがあり、それら全てを守って月を決めようとすると、2033年の秋ごろにはこんな問題が生じる。
2033年には 中気のない月が3つ、中気を2つ含む月が2つ現れてしまう。つまり、今あるルールだけでは、2033年8月25日からの7か月間、どこが何月かが決まらなくなってしまうのだ。
詳細な説明を省いているため分かりづらいかもしれないが、つまりは「今までのルールに従っているとズレが生じ、いつを何月にすればいいか分からない」ということだ。そして当然、旧暦で何月になるのか決めることのできない7か月間は、旧暦を使用して決定する 六曜も決定できないのである。更に六曜が決まらなくなってしまうと、六曜を重視し日程を決める冠婚葬祭関係の行事の日程まで決定できなくなってしまうのだ。
対策とこれから
2033年問題に関しては、既に仏教関係者、カレンダー業界などは把握しており、対策を始めている。各公式サイトなどで、該当する7か月間の月名と六曜をどうするかについての案を発表しているところも多い。ただ旧暦は重んじられているものの既に廃止されている。その前提によって公的機関は決定権のある発言を行わないため、これらの案に強制力はない。2033年までに各業界で統一した認識ができないと、大きな混乱が生じるだろう。
基本的に友引の日は葬儀をしない、したがって友引の前日に通夜もしないというように、葬儀関係では六曜をもとに予定が組まれているところもある。廃止されたにもかかわらず旧暦を用いた吉凶にまつわる風習は、今でも根強く日本に残り、多大な影響力がある。ただこうしたどうしようもない「ズレ」に関して、一部では「もはやこのような古い風習にこだわる必要はない」との意見も出ている。
葬式の形態も、近年では各家・状況に合わせて大きく変わっている。六曜について馴染みがあまりない世代も増えた今、今なお続く「古い文化」とどう付き合っていくかは誰もが考える必要があるだろう。さて、2033年問題にまつわる具体的な解決策は、未だ発表されていない。あと15年と1か月、どういった対策が取られるか見守りたい。