台風襲来の合間を縫って、知人の墓参に行ってきた。知人とは長い付き合いだったが、8年程前難病に罹患し急死した。そんな知人は鉄道会社に長く勤務し、運転士の教官を務めるだけでなく、運転士の教育学校の教頭に就任するほどの経歴だった。知人から聞く鉄道の話は大変興味深かったのだが、その中でも印象深かったのが、電車内での拾得物に遺骨が少なくなかったという体験談だ。
ちなみに9月9日付けの毎日新聞の報道によると、遺骨の落とし物は2016年までの3年間で、全国の警察に203件届出られていると報じている。そして、そのうち8割以上が、落とし主が見つかっていないとのこと。
実は置き去りではなく捨てた?
知人は、遺骨を忘れ物として取り扱った回数は4度あったという。その全てがスーパーの袋の中に陶器製の器が丸ごと入っていたそうだ。
袋を覗くと風呂敷に包んだ骨箱があり、その中に骨壷が入っていたとのことだったが、知人曰く落とし物・忘れ物ではなく、明らかに置いていったように見えたらしい。というのも、4柱とも内部を確認した際に遺骨のみで、埋葬証明書や戒名を記入した書類等、遺骨の身元を証明する書類が一切なく、隠されるように電車内に置かれていたかららしい。
遺骨を置き去りにした場合、どんな罪に問われる?
事件性の兼ね合いもあり、地元の警察に届けたそうだが、結局は事件性もなく警察による親族の捜査も実を結ばず身元不明とされた。最終的には地元の寺に無縁仏として埋葬されたとのことだった。知人は遺骨を見た際に腰を抜かしそうになるほど驚いたと同時に、悲しくもあったと言っていたのが印象に残っている。
ちなみに遺骨を置き去りにした場合どうなるかというと、刑法第190条の死体遺棄罪に問われることになる。有罪となれば3年以下の懲役刑に処される。遺骨を電車内に置いて(?)いった人達は、どのような思いで不敬とも思える行為を行ったのだろうか。
遺骨置き去り問題が起こる原因は?
最近の報道や、雑誌等の記事によると、その人の家庭内での立場に問題があると、死後遺骨を引き取りたくないという理由で、埋葬や供養を拒否し置き去りにするらしい。また貧困の問題も影響しているようで、埋葬料や葬儀費用が捻出できず、困り果てたすえに置き去りにしたということもあるようだ。
生前は悪人であっても死ねば皆仏であり、残された者は供養するのが当然。また、貧困ではあっても埋葬を始めとして、何某かの手はあるはずであり、遺骨を置き去りにするのは言語道断であると考える筆者は古い人間なのだろうか。
置き去り問題と墓制の関係性
日本の墓制は継続して墓守が存在することを前提としている。墓制の多様化が進んだ現在では、家族で同一の墓に入ることを是としないばかりか、多額の金がかかることを理由として、墓を建てない家族も増加傾向にあるという。これに連動しているかは不明だが、遺骨の置き去りもまた増加傾向だという。これからの日本の墓制に対し、もう一度見直さなくてはならない時期にきているのかもしれない。