『音楽葬』という言葉をご存じだろうか? 字面だけみると、なんだか美しい印象を受ける。これは近年徐々に増えている自由葬の形のひとつだ。何か音楽に関係するものであることはなんとなくわかるが、実際にはどのようなものなのだろうか。ちょっと変わった『音楽葬』について紹介したい。
音楽葬の具体的な流れとは?
『音楽葬』とは、簡単に言えば故人が好きだった、あるいは故人と遺族にとって大切な思い出のある曲や音楽を 通夜式や告別式の中で生演奏し、故人を見送る葬儀のことだ。無宗教葬儀であると言われることも多いが、必ずしもそうではなく、仏式の音楽葬、キリスト教式の音楽葬などももちろんある。この音楽葬では、式の折にふれ、音楽を演奏していくのである。
例えば一つの式の例を挙げてみよう。
参列者が入場の間は 故人ゆかりの音楽を静かに流し、そののち開式の挨拶、黙祷を行う。それから故人に向けてお別れの言葉を述べた後、その内容に合う曲、あるいは故人へ捧げる曲がまた演奏される。喪主が参列者に向けて挨拶をし、その後にはまた献奏がされ、参列者の献花、あるいは焼香のときも、故人にとっての思い出の曲を演奏する。後奏にて葬儀の終わりを知らせ、故人に別れを告げる曲を流しながら出棺する。
このように、とにかく演奏される曲の数が一般的な葬儀よりもかなり多いのが特徴だ。音楽葬においては、まさに音楽そのものが式の主体であり、故人への贈り物となる。
音楽葬の費用は?
さて、葬儀を執り行うにあたってどうしても気になるのはその費用。『音楽葬』ってなんだか実態がつかめなくて、費用もどのくらいかかるのかがよく分からない・・・。しかも生演奏とくれば、どうにも高くなりがちな印象だ。実際のところはどうなのだろうか。
近年は音楽葬も扱う葬儀社が増えているが、音楽葬の費用は 葬儀の規模や、派遣する演奏者・楽器の数によって大きく変わる。音楽葬としてのプランだと、斎場やスタッフを含んだ通常の葬儀プランの費用に加えて、演奏者、楽器の費用が足されるケースが多いようである。
ざっとネットで検索してみても、下は10万円、上は80万円と会社によってさまざまで、ずいぶん開きがある。
それでも印象通り、会場が広く、演奏者のレベルが高いほど 相場も上がっていくようだ。また場合によっては、演奏者に生での演奏を頼むではなく CDを用いるというのも手である。この方がコストは抑えられるので、どのような式にしたいのかよく相談して決めたい。
オンリーワンの葬儀 「音楽葬」
音楽葬はまだまだ有名ではない 新しい葬儀の形である。また自由葬のひとつとして挙げられているように、決まりきった形式というもの存在しない。そのために、主催も最初は戸惑うことが多いかもしれない。参列者も マナーが分かりづらく、そもそも「音楽が主役の葬儀」が珍しいために「変わっている」と感じられることもあるだろう。
しかし音楽葬の良さとは、故人の思い出を大切にした 世界でたった一つだけの葬儀ができるということではないだろうか。式中で流す曲を選ぶ際にも、故人との思い出を振り返る良い機会になるだろう。例が少ないために悩むことも多いだろうが、打ち合わせを納得いくまで行い準備すれば、故人にも、そして遺族にとっても あたたかく思い出深い式になるに違いない。