外貨建て生命保険というものがあるのをご存じだろうか。読んで字のごとく日本円ではなく、アメリカドルやユーロにて取り扱われる生命保険のことだ。筆者にも勧誘の案内が来たが、既に生命保険に加入済みであり、相続に関する対策は打ってある。資料だけ貰っておいたが、営業担当によればマイナス金利政策の影響からか、高齢者を始めとして加入者が増加傾向にあるとのことだった。今回は、外貨建て生命保険を相続に絡めて綴ってみたい。
外貨建て生命保険とは?
改めて外貨建て生命保険について簡単に説明すると、保険料の支払いを始めとして死亡保険金、満期保険金、解約返戻金の受け取りも、全て日本円ではなくアメリカドルのような外貨を以て全ての手続きが行われる生命保険のことだ。外貨建てである以上、毎日のように変動する為替相場によって、支払いも受け取りも直接影響を受けることになる。これは、一般的に為替リスクと呼ばれていて、耳にされた方も多いのではないだろうか。当該生命保険の加入を検討する場合、必ずこの為替リスクを考慮しないといけない。
外貨建て生命保険のメリットとは?
外貨建て生命保険のメリットだが、日本とは比較にならない程高い金利を享受できることだ。つまり状況にもよるが、高収入を期待できることであるとも言える。また、支払う保険料も日本円で取り扱われる生命保険より安価であること。これは、アメリカドルやユーロの予定利率が日本円よりも高いため、高い部分を以て支払い保険料から割り引かれているからだ。この辺の内容は各生命保険会社によって、若干の差がある。確認のうえ、比較検討することを勧める。更に為替相場の変動により、為替差益という副収入も得られる。
外貨建て生命保険のデメリットとは?
次にデメリットだ。為替リスクが最も大きいものと考えられる。具体的に説明すると、保険金を受け取る際に円転(日本円に換算)した場合、その受取日の為替相場によっては、金額が目減りしてしまうのだ。これが所謂為替差損と呼ばれるものだ。逆に増えた場合は為替差益となる。何よりも厄介なのが、為替相場の予測が非常に困難であり、一日だけでも大きく乱高下することも稀ではない。相続に関しては長期的な資産形成を検討しなければ、対策としては不十分に成り兼ねない。その状況で長期的な予測が困難なものを用いることは、大きなリスクを負うことにも繋がる。慎重な判断が必要となるだろう。更に、手数料が高額になり易いことも考慮しておくべきだ。
外貨建て生命保険は相続対策に向いている?
最後に相続対策に向いているか否かではあるが、結論は向いていない。デメリットの通り、為替リスクが非常に大きい。為替相場の予測が困難である以上、確りとした資産運用や相続税対策を取れないからだ。ある程度確定した金額を用いて、相続並びに相続税対策を練らなければならないのにも関わらず、予測が困難で確定させることができない金額を用いて対策を練ることなど無意味である。ただ、あくまでも相続に不向きであるだけで、一定の資産を有する方が、資産運用目的で外貨建て生命保険に加入する場合は、何等問題はない。その際は、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談して検討すれば良いものと考える。