先日ツイッター上で話題になった投稿。とある神社で頒布された御朱印帳をネットオークションにて転売されているのを見て、宮司が「もう来ないでほしい」と苦言を呈した。寺社仏閣を訪れた記念として集める人も多い御朱印、実際のところはどういったものなのだろうか。
ヤフオクで当社の御朱印帳が出品されていました。すでに落札されていまして社頭頒布の約3倍近い値段で落札されていました。神社頒布品をオークションに出品し利益を得る行為は許せません。頒布品は祓いをし神徳を得られるように祈願しております。一般商品とは違うものなんです。もう来ないで下さい。
— 守谷総鎮守八坂神社 (@m_yasakajinja) 2017年6月18日
御朱印とは?
御朱印とは、神社や寺院で参拝者向けに押印してもらうその寺社のサインのようなものだ。寺社名と参拝した日付が墨で書かれ、その上に赤く印が押されることから『朱印』と呼ばれる。御朱印を集めるための専用の帳面を『御朱印帳』、様々な寺社を巡って御朱印を集めることを『集印』という。
さてその御朱印、起源は寺社に写経を納める時の受付印として押されたという説が有力だ。今でこそ300円程度の奉納料で頂けることが多いが、印に寺社の名前が含まれていることからお札やお守と同様丁寧に扱うべき神聖なものとされている。
相次ぐ高額転売
集印は現在若い女性を中心に盛んになっていて、その人気を反映し御朱印帳自体も女性向けのお洒落な柄が増えるなど御朱印の在り方は少しずつ変わっている。集印ブームは注目を集め、御朱印集めを題材としたイベントを企画する旅行会社も増えてきた。
同時に、御朱印や御朱印帳にまつわる新たな問題が浮上した。冒頭にも述べたインターネット上における高額転売である。集めた御朱印や御朱印帳が、ネットオークションで転売され奉納料より遥かに高い値段で落札される事象が相次いでいる。対策のために奉納料を値上げしたり、御朱印の押印そのものを取りやめたりする寺社も現れた。
「御朱印は仏様や神様にご挨拶した印」
「御朱印帳はぜひ、あなたがいつか亡くなって棺に入るときには、一緒に入れてもらってくださいね」
去年の八月に東大寺を訪れた際に僧侶の方からこう言われ、大変驚いた。
祝日ほど混んではいなかったものの多くの観光客が訪れており、御朱印の受付も十分ほど並ぶ必要があった。御朱印を受け取った後、昨今の御朱印ブームについて話を伺うと、その僧侶はにこにこして教えてくれた。
「御朱印は、そのお寺や神社に参拝して仏様や神様にご挨拶しました、という印なんですよ。だからあなたが亡くなった後も大切なんです。最近は観光スタンプラリーのように頂きに来る女性も多いけれど、大事なのは仏様、神様にお参りしたこと。それを忘れないで大切にして頂きたいです
重要なのは御朱印そのものではなく、その寺社に参拝したということにある。集印の目的が変わってきた現代では、その意識が薄れてきたように思う。冒頭に紹介した宮司の言葉にも、この思いが込められていたからこそだろう。寺社仏閣巡りの醍醐味の一つとしても挙げられるようになった御朱印集め、その本当の意味や大切なことを、どうか見失わないようにしたいものだ。