ある日、Twitterを見ていたら気になる投稿を見つけた。
投稿者が小学生時代に使っていた筆入れを父親が線香入れにしている、といった内容のものである。その筆箱というのは昔ながらのマグネットで蓋が閉まる大きな革製のもので、蓋を開けると一本ずつ鉛筆が入れられるようになっている。本来なら鉛筆が入っているところに線香をさして持ち歩いているというのだ。ちなみに父親は四国三十三か所巡りをしているという。この投稿には「斬新な発想だ」「お墓参りにも便利そう」といった反応が見られている。
とにかく墓参りには荷物が多い
線香に限らず墓参りには荷物が多い。お供え物や花にろうそく、墓を洗うためのバケツなど。なかには掃除道具を貸出してくれる墓地もあるが、それでもかさばる荷物をどう運ぶかは地味ながら頭を悩ませるところである。しかも車がなければ大変だ。
父方の祖先の墓は石狩にあるのだが、実家のある札幌からは交通も不便であった。今でこそ駅からの送迎バスが出ており時刻表もホームページで確認できるが、そういった情報が届かなかった過去、とある事情で車を手放してしまった一時期には父がレンタカーを借りて墓地までの道を走らせていた。遠くから潮風の吹く長い道だったと思う。
墓下に収納スペースを発見
トランクに道具一式を積んで一家総出の墓参りだったが、ある時から墓下に収納スペースがあることに気づいた。線香やろうそく、ライターなどがしまえる空洞である。先祖の墓を作り替えたという話もないので元々あったものだろうが、つい最近まで勘違いしていた。それは本当に何の用途もないただの空洞で、発想力豊かな母が勝手に収納スペースとして使っていたのではないかと。家族で墓石を掃除した後に、線香やろうそくに火をつけ供え物をするのは母の役目だったが、まだ小さな子供たちを笑わせるために何もない穴から、おどけた風に色々なものを出していたからだ。
しかし本当に「収納庫」は存在していたようだ。引き戸式のものが多いようだが、なかには墓の外柵を収納スペースに利用し、縁の部分を椅子として座れるようにデザインされたものもある。高齢者など立ち上がりやしゃがむ動作が辛いときにも、安心して故人と向き合える気の利いた設計だと思う。何より必要な道具が保管できるので、以前よりは気軽に墓地に寄るのも可能だろう。
今となってはいい思い出
若かった母もそろそろ古希が近づいて来た。父は既に車の運転をやめ、子供たちもそれぞれの生活があり一家で墓参りに行く機会はほぼなくなってしまった。
墓参りを終えた後「石狩に何とかっていう食堂があるんだ。シリウスだかなんだかって名前の」という極めて曖昧な記憶で案の定たどり着けなかった、父の気まぐれも懐かしい。