先日、熊本で発生した地震に罹災された方々には、心からお見舞い申し上げたいと思う。
さて、日本は地震や台風と言った自然災害が世界の他の地域と比較してもかなり多い地域だ。故に、日頃から自然災害に関する備えをされている方も多いのではないだろうか。
しかしながら、地震や津波はそんな備えも関係ないとばかりに建物を始めとした様々な財産に甚大な被害を与えてしまう。その甚大な被害に対して、様々な救済制度がある。
今回のコラムは、様々な救済制度のうち、相続税と贈与税に関するものに絞って綴ってみたいと思う。因みに相続税と贈与税の救済制度は殆ど同一なので、相続税を中心としてみる。
減免・免除を受けられるかどうかの二つの条件
地震や風水害といった自然災害に罹災した場合、災害減免法の規定によって、相続税・贈与税が減免または免除される。次の二つの条件のうち、どちらか一つを満たせば当該制度の適用を受けることができる。
(1)相続税の税額計算の基礎となった相続財産のうち、罹災した部分の金額(保険金等で補てんされた分を除く)の占める割合が10分の1以上であること。
(2)相続税の税額計算の基礎となった動産等(金銭、有価証券、不動産を除いた財産)のうち、罹災した部分の金額の占める割合が10分の1以上であること。
この制度の特色としては、統計上土地そのものが被害を蒙ることが少なく、動産等に甚大な被害が発生することから設けられている。詳細は、税理士や弁護士に相談してみるといいだろう。
具体的にはどれほど軽減される??
次に減免・免除の内容についてだ。
相続税の申告期限内に罹災した場合と申告期限後に罹災した場合とでは、内容に大きな差がでてしまう。
申告期限内に罹災した場合は、相続財産から罹災した財産の評価額を差し引き、相続税を計算する。その結果、罹災した部分のみ相続税が減少することによって減免・免除されることになる。
続いて、申告期限後に罹災した場合だ。既に相続税が決定している後なので、改めて相続税の再計算はしない。相続財産のうち罹災した財産の占める割合のみ減免・免除されるのだ。
期限前に罹災した場合と比較すると、減免・免除される税額が少なくなる可能性が高い。極端な例だと、確定した相続税額を相続人各位が納付してしまった後に罹災した場合には、災害減免法の規定の適用を受けることができない。既に終わってしまったことなのであり、現行法の規定である以上は止むを得ない。不公平な面があるが、今後の法改正を期待するしか手がないのが実情だ。
自然災害は予測不可能だからこそ常に備えておくべきなのだろうが、現行法での救済制度にも当然限界がある。それらを踏まえつつ情報を収集し、専門家に相談しておけば、いざと言うときにもしっかりとした対応が可能となるだろう。