所得税並びに個人事業者の消費税、贈与税の確定申告が始まった。個人商店においては帳簿や請求書等の書類整理に頭を悩ませているところであろう。さて、今回のコラムでは、相続財産について留意しなければいけない点を綴ってみたいと思う。
相続はプラスの財産のみだけでなく、マイナス財産も対象!
相続の手続きが開始された時、誰もが、私の取り分は幾らになるのかを考える。つまりプラスの財産のみ考えて、しかもその用途や運用方法まで考えている方も多いのではないだろうか。
最初に留意すべき点として、相続財産には借金等即ちマイナスの財産も含まれるのだ。
プラスの財産を相続すると同時に、被相続人名義であるマイナスの財産も相続することになり、被相続人に代わり返済する義務を負うのである。プラスの財産のみ相続して、マイナスの財産は相続したくないという理屈は一切通用しない。
但し、一定の要件においては、マイナスの財産が無くなるか、限定的ではあるがマイナスの財産の減額を認められる場合がある。
プラスマイナス、どちらの財産も相続しない相続放棄
要件として一つ目は、相続放棄がある。相続そのものを放棄することだ。
当然、プラスの財産もマイナスの財産も相続しないことになる。
ここで留意すべき点は、相続放棄が認められるのは一度きりで、相続放棄の手続きをした場合には、その後の取り消しは一切認められないことだ。
相続放棄の手続き後、財産が欲しくなったから放棄を取り消して欲しいと言っても、認められない。マイナス財産は無くなるが、プラスの財産も無くなるのだ。税金に関しては、甘い話しなど有り得ない。
プラスでマイナスを相殺し、残ったプラスのみを相続する限定承認
二つ目の要件は、限定承認だ。これは、マイナスの財産を返済できる範囲においてのみ、プラスの財産を相続できる制度だ。
例を挙げると、マイナスの財産が100万円だったとする。プラスの財産が200万円だったら、100万円を相続できる。また、マイナスの財産が100万円で、プラスの財産が50万円の場合、50万円を相続する制度だ。
詳細は、税理士や弁護士と相談して欲しいが、留意すべき点として、プラス、マイナスを問わず、相続の場合には、必ず両方の財産を相続しなければならないことだ。
まずはプラスマイナス、それぞれどれほどの財産があるのか確認をしよう
後のトラブルを未然に防ぐためにも、プラスとマイナスの財産の状況をしっかりと把握することに努めて欲しい。
手間は掛かるかもしれないが、相続が開始されてから対応することの大変さを考えると、事前に対応していた方が精神的な負担は軽減されるはずである。
穏やかな終活を目標とするならば、避けて通ることはしないで対策を練って望んで欲しい。