先日あるテレビ番組で献体をテーマにした特集が組まれ放送されていた。
最近墓じまいや終活が増えているというのはよく聞くようになったが、それらに加え、献体も増えているらしい。
献体は医学の発展に貢献
献体とは本人の死後、医大や医学部のある大学の解剖教室に遺体を提供し、良医の育成に役立ててもらうことらしい(遺体引き取りの連絡は、各大学の医学部で組織される『白菊会』が献体の窓口なので、そこへ電話すればよいそうだ。ほかに『献体篤志家団体(献体の会)』もあるそうだ)。
献体することにより、遺体を提供した本人は医学の発展に貢献したということで、自分自身に誇りを持つことができたり、自身の人生に対する満足感や充実感を得られるらしい。奇妙に感じるかもしれないが、死後に献体の予定があると、そのことが生きがいになるらしい。おそらく献体が増えている大きな理由のひとつはこれではないだろうか。ただし家族や親類の合意が得られない場合、事故死のため遺体の損傷が激しい場合は献体できないようだ。
火葬費用やお墓の費用も大学側が負担
さらに、献体をすると大学側の費用負担で火葬してくれる。その後、遺骨は遺族のもとへ2年程度で返ってくる。献体した大学の授業で遺体が使用されるまでの順番待ちがあるようで、その間遺体は保管されるそうである。
大学により違いはあるようだが、遺骨の引き取り手がない場合限定で大学内の合祀墓に納骨してもらえるそうだ。献体者が入る合祀墓に関してだが、そこに入るための費用はかからないようだ(ある大学では毎年その大学の公式行事として、献体者のための慰霊祭も行われているそうだ)。
一般的には、献体希望者が事前に献体することに関して親族の合意を得、本人死亡後、葬儀を行ったうえでなされる。もちろん、亡くなってすぐに遺体を引き取りに来てもらうこともできる。葬儀をしないことに関して親族が同意さえしていれば可能だそうだ。
ますます増える献体希望者
少子高齢化が進めば今よりも献体希望者が増えるだろう。遺骨の引き取り手のない高齢者が今よりも増えると考えられるからだ。
ここで注意が必要なのが、「子供に迷惑をかけたくない」という理由で献体を希望する場合である。この場合「迷惑」という言葉の中には葬儀やその後の納骨などにかかる費用のことが含まれているはずである。費用面の話をすると、確かに火葬と納骨(遺骨の引き取り手がない場合のみ)に関しては献体者側に費用負担がない。しかしそれ以外のことは全て献体者側が費用を負担する。葬儀自体を行わないのであれば事前に親類・縁者の理解と合意を得る必要がある(献体者として登録していても、死亡時に大学に遺族が連絡しなければ遺体の引き取りは行われない)。
さらに言うと、無事献体できたとして、その後火葬された遺骨が遺族のもとへ返されるので、お墓や納骨堂などに遺骨を収める必要が生じる。ここでも費用が発生するのだ。自身の死に際してかかる費用を削減する目的で献体をしても、結局費用はかかってしまう場合がほとんどのようだ(献体者のほとんどは葬儀をすませた後で献体しているようだ)。
低費用だからではなく、世の中の役に立つという意義が重要
献体を考えているなら、事前に周囲と話し合い、献体に関してよくよく理解してもらう必要がありそうだ。そして献体前も後も費用は発生する。献体するなら、費用の面よりも人の役に立つという面を重視したほうがよいかもしれない。すでに大学に登録している献体希望者は「自分は死後、献体によって世の中の役に立つ」と思えるので、自身の死の前から晴れ晴れとした思いを持つことができるようだ。
どうやら献体をするには、「子供たちに迷惑をかけたくない」、「死後の面倒を見てほしい」という不安な思いよりも、自分たちが大きな負担を負っても世の中の役に立ちたいという思いと、それを理解する家族との強いつながりが必要なようだ。