相続税対策として有効なものの内、小規模宅地の特例(租税特別措置法第69条4項他)がある。一定の要件を満たせば、200㎡~400㎡までの宅地について、相続税が課税される評価額を最大で80%減額できる制度だ。当該制度は効果が高いだけに縛りも厳しいため、要件を満たしているか否か慎重に判断しなくてはならない。筆者の経験では、要件のなかで判断が困難なものがあった。それは被相続人と同居というものだ。今回は小規模宅地の特例について簡単に解説してみよう。
そもそも被相続人との同居とは?
小規模宅地の特例の適用を受けることができる場合は、被相続人が所有する自宅と自宅に付随する土地(以下自宅等)を相続した被相続人の配偶者、並びに被相続人と同居し、かつ、自宅等を相続した後、相続税の申告期限までに所有して居住を継続した親族、前述の配偶者と親族に該当する人が居なければ、自宅等を相続した後、相続税の申告期限までに所有して居住を継続した他の親族となっている。
同居しているかどうかの事実はどのように捉える?
慎重に判断するべき問題は、同居の事実についてだ。ただ、配偶者については同居と別居について関係なく特例の適用を受けることができるが、親族については同居の事実が確認できないと特例の適用を受けることができなくなってしまう。では、同居とは何を以て同居とされるのかと言うと、共に起居しているか否かなのである。そして、起居について日常の生活状況や自宅への入居目的等を総合的に判断されることになる。
1 完全分離型二世帯住宅に居住していた場合
建物は同一であっても、内部構造は二世帯が完全に独立した状態だった。これは、平成26年以前は特例の適用が認められなかったが、平成30年現在では特例の適用を受けることができる。
2 被相続人が老人ホームに居住している場合
被相続人に介護が必要となり、老人ホーム入居した後退所することなく亡くなった場合は、平成26年以前は特例の適用が認められなかったが、平成30年現在では特例の適用を受けることができる。
3 二世帯住宅に居住しているが、世帯ごとに登記している場合
一般的な戸建て住宅で、一階部分を親(被相続人)世帯、二階部分を子(相続人)世帯として別々に登記していた場合、特例の適用は認められない。
4 住民票は同一でも同居していない場合
住民票における居住地を被相続人の居住する自宅等に移しても、同居している事実が無ければ特例の適用は認められない。また、住民票は違っていても同居していれば、特例の適用を受けることができる。
迷ったら専門家に相談するべき
実際に同居しているか否かを事実に準拠して判断される。具体的には公共料金の使用状況や、郵便物の送付状況を細かく確認されることになる。もし判断に困ったら、迷うことなく税理士や弁護士に相談して欲しい。