人生も半ばを過ぎると、自分が死ぬ時の事をよく考えるようになる。いったいいつ、どんな風に死ぬのか、どんなお葬式を挙げてもらえるのか…。その中で「棺桶に入った自分の姿」を想像して見る事がある。左前の経帷子を着た白装束の自分の姿…。しかし、そこでふと疑問が湧いてきた。お葬式や仏壇仏具が、伝統的なものからどんどん新しいスタイルに変わっている現在、死装束も、もっと自由に選べてもいいのではないか、と。そこで今回は、新しい死装束につて調べてみた。
終活から生まれたエンディングドレス
「終活」が注目を集め始めた近年「自分の好きな服装で旅立ちたい」という考え方が広まり、女性を中心に生前から死装束を選ぶ傾向が高まって来た。そんな中、人気を集めているのが「エンディングドレス」だ。
エンディングドレスはその名の通り、人が「最期に着る衣装」であり、これまでの死装束と違って様々なデザインのものがある。
基本的にはふんわりとしたデザインのロングドレスで、色は白、ピンク、薄紫などの淡い色合い。刺繍やレースがあしらわれ、どれもとても上品だ。和装の形を取り入れたデザインもあり、女性用ほど種類はないが、もちろん男性用もある。
エンディングドレスのメリット
エンディングドレスには、豊富なデザインの他にも様々なメリットがある。それは、ドレスを選ぶ事で生前から死を前向きに受け止められる、病気などで痩せたご遺体をカバーできる、遺族も美しい姿の故人を見送る事が出来る、死後硬直したご遺体にも着せやすい、などである。
このような理由からも、今後もエンディングドレスを希望する人は増えて行くのではないだろうか。
イギリスでは死装束のファッションブランドが展開されている
死装束に対する考え方が変わって来ているのは、日本国内だけではない。イギリスのファッションブランド「Lyst(リスト)」では「Over My Dead Body」として、死装束のファッションラインが展開されている。やはりイギリスでも、最期は自分の着たい服を着ていたい、という考え方が広まって来ているのだ。
こちらの商品を見ると、生前に着ていてもまったく違和感のないデザインの華やかなドレスや靴が揃っている。日本人にはまだまだ難しい感覚だが、さすがはイギリス、と感心する他ない。
オーストラリアには遺体とともに溶けていく死装束も
オーストラリアで活動するデザイナーのピア・インタランディさんは、ご遺体の腐敗と共に溶けていく生地で死装束を手がけるデザイナーだ。
インタランディさんは、埋葬したご遺体が腐敗して、腐敗の遅い化学繊維の衣服だけが残る、という状況に違和感を感じ、この生地を開発した。日本と違って土葬が主流の国ならではの発想と言える。
また、死装束には故人への想いを込める事が大切だ、と考えている彼女の死装束には、故人が生前に好んだ詩や家系図が刺繍されていると言う。
「旅行するなら、お気に入りの服で」と同様に
死装束は、天国へ続く旅へと向かう衣装である。旅に出るには、やはり自分の気に入った服装で出発したい。エレガントに、身軽に、おしゃれに、その想いは人それぞれだろう。
故人の信仰にもよるが、基本的に死装束に特に決まりはなく、火葬の際、燃やす事の出来ない金属やガラス類にさえ気を付けていれば大丈夫だ。
それならば、故人のお気に入りのファッションで見送る事が出来れば、それほど素敵なお別れはないのではないか、と思った。